より問題なのは、「原油コストは0.1円単位で変動する一方、元売りの基準卸売価格は0.5円単位で計算されることだ」(中澤氏)という。このため原油コストの上昇局面では、卸売価格はより急カーブで上昇する可能性がある。

制度開始から2年4カ月間、各価格の推移を追跡してきた中澤氏によれば、全期間平均で毎週0.055円のプラスの誤差が発生している。これをもとに中澤氏が試算したところ、「卸売マージンが拡大しており、便乗値上げ分の実額は(累計で)約1兆円に達している」という。

ただ、資源エネルギー庁はこの問題について、「市場メカニズムの中の動きで調整されること」として意に介さない。

補助金の出口を早急に国民に周知するべき

前出の野村総研の木内氏は、「税金をあまねく集めて生活に余裕がある人まで広く補助する政策は効率が悪い。一定の所得水準以下の人に絞った物価対策などに衣替えすべきだ」と話す。そのうえで、補助金の出口への道筋を早急に国民に周知するべきだと指摘する。

「補助金で無理やりガソリン価格の水準を変えるのはおかしいことで、むしろ国民に慣れてもらわなければならない。去年も国民への出口の周知に失敗し、延長せざるをえなくなった。同じ轍を踏んではならない」(木内氏)

一方、資源エネルギー庁の日置純子・燃料流通政策室長は、「補助金はいつまでも続けるものではないが、安くしてほしいという強い声に日々直面している。今の状況で、いきなり補助金をやめられるのか」と話す。

出口戦略はまだ、見通せそうにない。

著者:森 創一郎