最近、ヤングケアラーやダブルケアなど、介護者の視点から介護をとらえた問題が、多く取り上げられている。

これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。

今回のテーマは「“介護する側”に問題が起きたときの対処法」。エピソードを元に、介護者に必要なポイントや姿勢、困ったときの対処法などについて解説する。

子どもを育てながら、近くに住む80代の両親の生活を見守ってきたA子さん(50代)。

彼女の母親は末期がんで、入院生活を経た後、数カ月前から自宅で療養生活を送っています。私は母親の在宅医として、A子さん家族と関わるようになりました。

いきなり始まった両親の介護

最初にお会いしたときのA子さんは、かなり追い詰められているように見えました。というのも、父親には以前からうつ症状があり、精神的に不安定な状態。精神科に通って薬を処方してもらっていました。

これまで、その通院を付き添っていたのは母親でしたが、末期がんとなった今、そうはいきません。結局、A子さんが父親に代わって、精神科に薬をもらいに行く状況に。それまで父親のことは母親に任せっきりだったA子さんは、突然降りかかってきた両親の介護に、パニックになりかかっていたのです。