一方、シングルクローズドテストでは、目的とする成分を含む被試験物のみを試験する、対照物のない試験です。どんな人でも、「これは効果があります」といわれてからその物質を食べて試験に臨めば、何となく効果が現れるものです。この効果をプラセボ効果といいます。

私が知る限り、変形性関節症に対して実施された臨床試験で、有効性を示したダブルブラインド試験はありません。もし、私の勉強不足でそのようなものがあったとしても、その試験の信頼性が高いとは思えません。なぜなら、まともに実施された信頼ある臨床試験とは異なる結果だからです。

グルコサミンなどに効果はある?

ここからは、それぞれの化合物がなぜ効果がないかとする根拠について、関連する特性についてご説明しましょう。

まず、グルコサミンです。グルコサミンはよくテレビコマーシャルなどで宣伝しているのでご存じの人も多いと思います。変形性膝関節症に対する効果があるとして販売されています。しかし、グルコサミンは名前の通り、グルコースにアミン(アミノ基)が付いた構造です。

グルコサミンは消化管に入ると、消化酵素によりグルコースからアミノ基が外され、グルコースになります。グルコースはご存じの通り、砂糖やでんぷんなどが分解されて生成される単糖です。つまりグルコサミンを経口で摂取した場合、グルコースを摂取することと何ら変わりはないわけです。

このグルコサミンについて、臨床医師が50〜60歳の6691人の女性を対象として行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されませんでした。ただし、軽症者では有効とする報告もあるのですが、この試験は前述したシングルクローズドテストであって、その信用度は低いものです。