企業は世界の動向につねに多大な影響を及ぼしてきた。そして企業は、誕生した当初から、共通善(社会全体にとってよいこと)の促進を目的とする組織だった。しかし今、企業はひたすら利益だけを追い求める集団であり、人間味などとは無縁のものであると考えている人は多い。では、企業はどこで、どのように変節してしまったのか? 今回、古代ローマの「ソキエタス」から、現代の「フェイスブック」まで、8つの企業の功罪を通して世界の成り立ち知る、『世界を変えた8つの企業』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

「企業」とは何か?

そもそも企業(コーポレーション)とは、具体的に何を指すのか。

事業体と同義語のように使われることも多いが、企業と事業体とは同じではなく、ある決まった形態や構造をもつ、特定のタイプの事業体のことを企業と呼ぶ〔英米における「コーポレーション」と日本語の「企業」とはイコールではないが、本書では、「企業」という語は基本的に、ここで定義されている「コーポレーション」の意味で用いる〕。

企業という概念は共和政ローマで初めて生まれたもので、英語のコーポレーションという語は、「体」を意味するラテン語コルプス(corpus)に由来している。では、具体的に企業とは何かというと、この由来にも示唆されているとおり、個人の集まりが、法律にもとづいて、一体化したもののことである。

それまで個人の集まりだったものが、企業になると、個々のメンバーの人格とは別個の人格として、行為することも、行為の対象にすることもできる。