そもそも日本企業がメジャーリーグ球団と契約することによって得るメリットは何か。たとえば、球場内の看板に広告を掲出したり、グッズを販売したりすることが可能になるわけだが、それらは
 
1. 米本国での宣伝効果
2. 日本での宣伝効果
3. ブランディング効果/PR効果

という形での効果がある。

1点目について、現在、企業のグローバル化が進んでいるが、円安効果によって日本企業の海外での業績も拡大している。例えば、今年2月にドジャースとスポンサーシップ契約を締結したTOYO TIRESは海外の売り上げが全体の8割近くを占めており、その過半を北米が占めている。ドジャースとの契約には合理性があるといえる。

2点目の日本における宣伝効果だが、野茂英雄氏以来、石井一久氏、黒田博樹氏、前田健太氏、ダルビッシュ有氏など、ドジャースは多くの日本人選手を起用しており、日本人にも親しみは深い。大谷選手だけでなく、ドジャースには山本由伸選手もいる。現地に応援に来た日本人ファンへの広告、物販効果だけでなく、テレビ放送などによる「2次効果」も考えると、多くの日本人に広告や企業名を訴求することが可能になる。

昨日、4月15日はジャッキーロビンソンの日だった。ジャッキーロビンソンはこの日、メジャーリーグ初の黒人選手として当時のブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス・ドジャース)でデビューした。当時は黒人差別が激しい時代だった。この例が示すように、ドジャースは元々人種の多様性を尊重する先進的な球団であり、日本企業にとっても支援する価値は高い。

3点目に関しては、ドジャースにスポンサードすることによって、その企業が手がける商品のブランドイメージが向上したり、メディアやネット上で話題になったりして知名度や好感度が上がる効果が期待できる。実際、ドジャースと契約した企業はメディアで繰り返し報道され露出している。

ブランディング効果は、可視化しづらいし、短期的に売り上げに直結するものではない。しかし、「(日本人選手が活躍する)ドジャースを応援する企業」としてのイメージが形成される効果は大きい。日本経済が好調かどうかはさておき、円安も後押しとなって収益が拡大する大手企業は多く、広告・宣伝への「先行投資」にも積極的になっている。

大谷選手とのスポンサー契約にリスクはもうない?

もちろん、日本企業はドジャースとではなく、大谷選手個人と契約をするという方法ある。元専属通訳の水原氏の違法賭博問題によって、一時期スポンサー離れが起きるのではないかという懸念もあった。しかし、本件は収束に向かっており、大谷選手は潔白である可能性が濃厚となってきている。

過去にも、イチロー氏、松井秀喜氏など、日本人メジャーリング選手には、多くの日本企業がスポンサーしてきた。彼らの活躍ぶりとそれに裏打ちされた人気はもちろん、スキャンダルがほとんどなく、人格も優れて、真摯に野球へと打ち込んでいるというイメージがあったからこそ、企業は安心してスポンサーになることができた。