トマト アイスランドにおけるトマトの自給率はなんと75%。その背景にあるものとは(写真:筆者撮影)

あるときはキューバの家庭の台所に立ち、またあるときはブルガリアでヨーグルト料理を探究して牧場へ向かう。訪れた国と地域は25︎以上、滞在した家庭は150以上。世界各地の家庭を巡りながら一緒に料理をし、その土地の食を通じて社会や暮らしに迫る「世界の台所探検家」の岡根谷実里さん。今回訪れたのはアイスランド。氷に覆われた真冬の大地で目にしたのは、真っ赤な実をつけるトマト農園だった。

白い大地で存在感を放つトマト

世界地図を見ると、こんなところにも人が住んでいるのかと気が遠くなる土地がある。

アイスランドも、そんな国の1つだ。北の果て、特に日本を中心とした世界地図では左上(北西)の隅にぽつんと描かれていて、最果ての感がある。実際、北緯63〜67度という北極圏にぎりぎりかかる極北にあり、気軽に行こうとは思わない土地だった。

この国の家庭を訪れることにしたのは、「寒い土地の寒い時期の食事情を知りたい」という興味からだった。

滞在を経て印象的だったのが、自然環境の制約を受けた食事情の厳しさだ。冬が長い、木が乏しい、穀物が育たない。

しかしその中で、ことさら存在感を放っていたのが、真冬でもとれる真っ赤なトマトだった。本稿では、自然の制約を受けたアイスランドの食事情と、トマト生産について紹介したい。

アイスランドの大地(写真:筆者撮影)