「はじまりがあれば終わりは必ずくる」は、NHKの夜ドラ『VRおじさんの初恋』(NHK総合毎週月曜〜木曜22時45分〜23時)のセリフである。

「夜ドラ」は名作が続々生まれている注目の枠で、『VRおじさん〜』もひそやかな夜の楽しみにうってつけ。今週最終回を迎えるにあたり、おそらく寂しさとともにどんなふうに終わるかワクワクしている視聴者も多いことだろう。

※以下、物語のネタバレを含みます。

女子高生に扮したおじさんが恋をした

同作は長らく生きてきて成功体験と言えるものがない、40代のおじさん・直樹(野間口徹)がVR――Virtual Reality(「仮想現実」)の世界にハマって、そこで出会った人に恋をする物語だ。

原作は暴力とも子の描いた漫画で、すでに完結しているから、最終回はわかっているといえばわかっている。だが、とかくドラマは原作とは違うところがあるものなので、予断を許さない。終わりよければすべてよし。なにごとも最終回が肝要だ。ここでは最終回を前に、この名作の魅力を振り返ってみよう。

『VRおじさんの初恋』の肝は、“現実の世界”と“バーチャルの世界”をどうとらえるかにかかっていると思う。直樹は現実の世界では、いわゆる“イケおじ”(イケてるおじさん)ではなく、むしろ冴えないおじさんである。会社では目覚ましい活躍など皆無なうえ、遅刻しがちで上司に目をつけられ、希望退職者候補になっている。女性とつき合ったこともない。