北陸新幹線が延伸し、東京〜福井間が「かがやき」1本で行けるようになりました。しかしこの区間は、東海道新幹線経由も依然として有力なルートです。値段やダイヤなどを比べると一長一短でした。

早めに予定が決まったら「北陸」?

 2024年3月16日、北陸新幹線の金沢〜敦賀間が開業し、東京〜福井間が乗り換えなしで行き来できるようになりました。

 福井市出身・首都圏在住の筆者(蜂谷あす美)は、「東海道新幹線『ひかり』で米原へ、特急『しらさぎ』で福井まで」という経路で帰省していましたが、今後このルートだと「東海道新幹線『ひかり』+北陸本線『しらさぎ』+北陸新幹線『つるぎ』」と乗り換えが2回に増えるため、「ならば、乗り換えなしの北陸新幹線一択だろう」と深く考えずに思い込んでいました。

 しかし、本当にそれで正しいのか。「東京〜福井」の鉄道移動を様々な点から改めて比べてみました。

 まず気になるのは値段です。紙のきっぷで東京〜福井を利用する場合(大人片道・通常期・普通車指定席)、北陸新幹線1万5810円に対して、東海道回りだと1万6950円となり、北陸新幹線の方が1000円以上安く済みます。

 いわゆる「お得なきっぷ」だと、北陸新幹線のチケットレスサービス「新幹線eチケット」は14日前までの予約で1万920円にまで抑えることができます。一方の東海道回りは、東海道新幹線を「スマートEX」で利用し、米原〜敦賀〜福井で「スマートEX」利用者が購入できるe5489限定の「乗継きっぷ」を利用すると、合計1万4590円です。

 一見すると北陸新幹線の方がリーズナブルに思えますが、「新幹線eチケット」の早割サービスは申込期限だけでなく席数も限定されていることから、乗車までに2週間を切っている、または売り切れの場合は前日までの予約(席数限定)で1万4040円、当日予約で1万5610円と値段が上がっていきます。

 これに対して「スマートEX」と「乗継きっぷ」の組み合わせは、当日購入が可能なうえに席数制限もありません。早い段階でスケジュールが定まっているときは北陸新幹線の「新幹線eチケット」、逆にギリギリまで予定が見通せないときは東海道回りの「スマートEX&乗継きっぷ」が良さそうです。

所要時間は昼間なら大差なし

 次に、運行本数と所要時間を比較します。北陸新幹線で東京〜福井間を直通する定期列車は「かがやき」と「はくたか」合わせて14往復あります。また、後続列車に追い抜かれない「東京〜金沢『はくたか』+金沢〜福井『つるぎ』」の組み合わせが1往復あるので、無理やり感はありますが「合計15往復」としておきましょう。

 東海道回りは「東京〜米原『ひかり』+米原〜敦賀『しらさぎ』+敦賀〜福井『つるぎ』」の組み合わせが14往復、さらに早朝・深夜には「東京〜米原『ひかり』+米原〜敦賀『快速』+敦賀〜福井『ハピラインふくい快速』」が1本ずつあり、こちらも合計15往復。単純な本数の比較では引き分けとなりました。

 さらに所要時間を見ていきます。北陸新幹線の東京〜福井間は、朝晩に最速達の「かがやき」、日中に停車駅多めの「はくたか」が運行されています。「かがやき」は所要3時間前後ですが、「はくたか」は3時間半強かかります。これに対して東海道回りは、早朝深夜を除けば「だいたい3時間半」。つまり、日中の時間帯であれば差はありません。

 また東海道回りの場合、東京→福井は、東京を毎時「33分」に出発、福井に毎時「0分くらい」に到着。福井→東京は、福井を毎時「40分くらい」に出発、東京に毎時「12分」到着といった具合にパターンダイヤがおよそ成立しています。このため頻繁に往来する人にとっては使い勝手が良いのではないでしょうか(体験談)。

東京に少しでも長くいたい場合は東海道回りだと思っていたが…

 滞在時間を確保する観点から、朝は「目的地にどれくらい早く着けるか(一番列車)」、夜は「現地で何時まで過ごせるか(最終列車)」も気になるところです。

 まず、朝の一番列車を見ていきます。

●東京→福井
・北陸新幹線:東京6時16分発「かがやき501号」→福井9時13分着
・東海道回り:東京6時21分発「ひかり631号」→(乗り換え)→福井10時6分着

●福井→東京
・北陸新幹線:福井6時32分発「かがやき502号」→東京9時32分着
・東海道回り:福井5時49分発ハピライン快速→(乗り換え)→東京9時42分着(名古屋で後続の「のぞみ204号」(休日運休)に乗り換えると東京9時24分着)

 続いて、夜の最終列車を見ていきます。

●福井→東京
・北陸新幹線:福井20時33分発「かがやき518号」→東京23時32分着
・東海道回り:福井19時42分発「つるぎ45号」→(乗り換え)→東京23時6分着

 以上、両方向の一番列車と東京行きの最終列車は、基本的に北陸新幹線に軍配が上がります。ちょっとだけ様子が違うのは、東京→福井の最終列車です。

●東京→福井
・北陸新幹線:東京19時56分発「かがやき517号」→福井22時52分着
・東海道回り:東京20時12分発「ひかり663号」→(乗り換え)→福井0時1分着

 このように東海道回りの方が16分長く東京で過ごせます。ちなみに東京20時21分発「のぞみ91号」に乗っても名古屋で「ひかり663号」に追い付くので、この場合は滞在時間をもう少しだけ延ばせます。

 ただし、北陸新幹線には滞在時間を伸ばせる「裏技」があります。前述の「かがやき517号」のあとに東京21時4分発の金沢行き「かがやき519号」がありますが、これに連絡する金沢→福井のバス運行を福井県が始めました。

 県担当者によると「北陸新幹線を使って東京方面へ出張・旅行される県民の方の東京滞在可能時間を1時間延ばすことが目的。当分の間、県の実証事業として運行予定」とのことでした。福井着は1時15分とかなり遅めですが、「飲み会」にきっちり参加したいときにおススメの組み合わせです。

北陸新幹線なら寝過ごしにおびえなくてよい

 ここまで所要時間や料金など机上で計算できることばかり気にしてきましたが、東海道回りの場合、米原での「1階新幹線ホーム→2階コンコース→1階在来線ホーム」、敦賀での「1階在来線ホーム→2階コンコース→3階新幹線ホーム」と2度の乗り換えからは逃げられません。

 早朝に東京→福井を移動する場合、北陸新幹線であれば、発車と同時に寝落ちしても「寝過ごしても終点は敦賀だし」と謎の安心感があるのに対して、東海道回りの場合は、「ひかり」で寝過ごしたら新大阪、さらに敦賀からの「つるぎ」で寝過ごしたら金沢または富山と、2度にわたり不安を覚えることになります。

 ただ、乗り換えは目的地以外の土地の空気を吸える寄り道の側面があります。例えば米原なら「井筒屋の駅弁」が購入できるお楽しみが待っています。

 一方の北陸新幹線は、全席コンセント完備なうえに一部の列車を除いて車内販売が健在。車内で「シンカンセンスゴイカタイアイス」が買える楽しさも捨てがたいです。

 また北陸新幹線は、浅間山、それに糸魚川での日本海との出会い、立山連峰などが車窓の見どころですが、景色の見えない区間も多めです。対して、東海道回りは、安定の富士山、浜名湖、伊吹山、さらに米原〜敦賀間の「しらさぎ」からは琵琶湖、余呉湖などが見られます。

忘れてはならない、ぐるり「一筆書き」

 結局、福井〜東京間について北陸新幹線を使うのも、東海道回りも、ともに魅力があるように感じてきました。ならば登場するのは、両方楽しめる一筆書きルートです。乗車券を「東京〜北陸新幹線〜福井〜北陸新幹線〜北陸本線〜東海道新幹線〜東京」のようにぐるりと一周する経路で買います。

 2015年の北陸新幹線金沢開業以降、単純に往復するよりも安いことから、このルートを使う人も多いのではないでしょうか。安心してください! 紙のきっぷの場合は、変わらず一筆書きルートが最安値の2万8470円(運賃1万3200円、特急料金1万5270円。福井で下車)です。

※3月21日15時半、一部修正しました。