敦賀延伸で福井県内も走るようになった北陸新幹線のE7系・W7系電車。東北新幹線や秋田新幹線用の車両と比べると明らかに「鼻」が短いです。しかし、この設計は理にかなったものだとか。むしろ一部では勝っている部分もあります。

ほぼ同一なE7系とW7系

 北陸新幹線の金沢(石川県)〜敦賀(福井県)間が、2024年3月16日(土)に延伸開業しました。これにより、東京から加賀温泉や福井まで乗り換えなしで行けるようになり、東京―敦賀が最速3時間8分で結ばれています。

 北陸新幹線には、停車駅に応じて「あさま」「はくたか」「かがやき」「つるぎ」の4種類が用意されています。しかし、用いられる車両は、JR東日本のE7系電車とJR西日本のW7系電車のみ。しかも、この2車種は形式名こそ異なるものの、その構造や性能、デザインはほぼ同じです。

 E7系・W7系より数年前に開発されたE5系やE6系電車は、ノーズ(先頭車の先端から後方へ車体が大きくなっていく部分)が長くて複雑な形状をしています。ところが、E7系・W7系はノーズが短くなり、その形状もシンプル。特にノーズの長さはE5系・E6系よりさらに前の車両であるE2系電車に近く、ショートノーズ気味です。

 これは北陸新幹線の最高速度が、法令によって260km/hに抑えられているためです。E5系とE6系は東北新幹線を日本最速の320km/hで走ることから、長くて複雑な形状のノーズを採用することで高速運転時の騒音を抑えています。一方、260km/hの北陸新幹線では、E5系やE6系と同じレベルの騒音対策は必要とはいえません。

 また、E5系とE6系はカーブで車体を傾けるシステムを導入して高速運転時の乗り心地の悪化を防いでいますが、これもE7系・W7系は搭載していません。なお、設計上の最高速度は260km/hより少し速い275km/hです。

 とはいえ、E5系とE6系で培った技術をまったく使っていないわけではなく、モーターなど一部の機器類はE5系やE6系と同じです。なお、北陸新幹線沿線の商用電源周波数は50Hzと60Hzの地域が混在しているため、E7系とW7系はどちらの周波数にも対応するための機器を搭載しています。

上越新幹線のスピードアップにも貢献

 車体の塗装は白をベースに、先頭や屋根は青。このほか、銅色を帯の色に使っています。1編成はE5系より2両多い12両で、敦賀(福井)寄りの先頭車となる12号車は「鉄道版ファーストクラス」といえるグランクラス。続く11号車がグリーン車で、残り10両は普通車です。車両数やデザインは異なるものの、E5系と似た構成だといえるでしょう。車内は日本の四季や伝統を織り込んだデザインを採用しています。

 近年進んでいる鉄道車両のモバイル機器対応はE5系やE6系よりも充実しており、E7系とW7系は初めてすべての座席にコンセントを設置しています。これは、E5系と比べて最高速度が遅く、電源容量に余裕があったことから「全席コンセント」が実現したのだとか。また、グランクラスとグリーン車には最新タイプの空気浄化システムも搭載しました。

 E7系が営業運転を開始したのは、北陸新幹線の延伸開業に先立つ2014(平成26)年、東京〜長野間の「あさま」でのこと。翌2015(平成27)年に金沢まで延伸した後は、E7系とW7系が「かがやき」「はくたか」「つるぎ」でも使われるようになりました。
 
 そして、このたびの金沢〜敦賀間の開業により、福井県内でも姿を見るようになっています。

 また、2019年からは、上越新幹線「とき」「たにがわ」の一部にもE7系が導入され、2023年3月のダイヤ改正で上越新幹線のすべての列車がE7系に統一されています。なお、上越新幹線ではE7系の設計最高速度である275km/hで運行されています。

 ちなみに、東北新幹線では通常運転されていませんが、仙台〜金沢間を直通する団体臨時列車でE7系が運用に入ったことがあるほか、盛岡新幹線車両センターでイベント展示されたこともあります。