利用が低迷する木次線の一部区間について、JR山陰支社が沿線自治体と今後のあり方について協議を始める意向を示したことを受けて、沿線自治体では警戒感が広がっています。協議の対象区間がある島根県奥出雲町で取材しました。

JR山陰支社・佐伯支社長:
出雲横田ー備後落合間に関して、出来るだけ早いタイミングで地元にお伺いして「持続可能な交通体系」について相談させていただきたい。

JR山陰支社の佐伯支社長は23日、利用が低迷しているJR木次線の出雲横田ー備後落合間29.6キロについて、今後の路線のあり方について関係自治体と速やかに協議を始めたいとする意向を明らかにしました。
発言を受けて島根の丸山知事は、「相談内容が廃止を前提としたものであれば、相談には応じられない」と反発しています。
こうした中、沿線の奥出雲町を訪ねてみると…。

宍道正五記者:
午前8時前の出雲横田駅です。まもなく(広島県の)備後落合駅に向かう始発列車が発車しますが、乗客はわずか2人です。

24日朝、奥出雲町の出雲横田駅では、雲南市の木次駅から到着した列車に乗っていた生徒たちが、駅近くにある高校へ通うために大勢降り立ちました。列車はこの後、広島県庄原市の備後落合駅へ向かいますが、車内に残った乗客はわずか2人でした。

乗客:
旅行です。今後(木次線が)どうなるか分からないので、乗れる時に乗っておこうと思って。

2人の乗客はいずれも観光目的。地元の利用者の姿はありませんでした。

この区間を走る列車は1日3往復。JRによると、2022年に公表したデータで1日1キロあたりの利用客数にあたる平均通過人員は54人で、1998年度に比べ約4割減少しました。
途中の4つの駅がありますが、この列車で乗り降りしたのはわずか1人でした。

宍道正五記者:
終点、備後落合駅に到着しましたが、降りてきた乗客は2人だけです。

午前9時、1両編成の列車は県境を越え備後落合駅に到着。駅周辺には民家が数軒あるだけで、折り返しの木次行きの列車に乗り込んだのは4人。地元の住民ではなく観光客でした。
2023年に運行を終了した観光列車「奥出雲おろち号」。その一番の見せ場だった出雲坂根の「三段式スイッチバック」もあるこの区間の将来は、いよいよ議論の対象に。長年おろち号を見守り盛り上げてきた沿線の道の駅のスタッフは…。

道の駅・奥出雲おろちループ・吉川佳代子さん:
おろち号が終わってからお客さんから寂しいという声を聞くし、木次線がなくなったと思っている人もいるので、そうならないようになんとかして欲しい。

中国地方では、接続する芸備線の区間に次いで利用が低迷しているこの路線の現状についてJRは…。

JR山陰支社・佐伯支社長:
通学や通勤など生活利用がほとんど見られず、乏しい。きめ細かい移動サービスに応えられていない面がローカルエリアにおいて顕著。地域の役に立てておらず厳しい利用状況」

鉄道の特性が発揮できていないと現状を分析、地域の実態に応じた利用しやすい交通体系をつくる必要があるとしています。

奥出雲町・糸原保町長:
廃止ありきという相談なら受けることはできない。これまで町民一体となって(木次線を)盛り上げてきたことをJRに分かって欲しいし、伝えていきたい。

奥出雲町は今後、県や他の沿線自治体と情報共有した上で対応を検討することにしています。