ことしは当たり年、記録的な豊漁となっている富山県のホタルイカ。浅瀬に大量に現れる“爆湧き”を求めて、富山市の海岸には全国からタモをもった“ハンター”たちが殺到しています取材をしたのは木曜夜から金曜明け方にかけて。平日にも関わらず大勢の人たちでにぎわっていました。それもそのはず、この日は“爆湧き”の条件がそろっていたのです。記者もタモにヘッドライトをつけて臨みました

今年撮影された“爆湧き”の様子

記者:「時刻はまもなく午前0時になるところですが、車が駐車場にどんどん入ってきます。駐車場には止めきれないので路上駐車されている方もたくさん見受けられます」

11日夜から12日未明にかけて平日にも関わらず、富山市八重津浜の海岸には全国から大勢の人が訪れていました。

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記者:「きょうはどちらから?」
男性:「下呂市(岐阜県)です。富山のホタルイカ、ぷりっぷりで美味しいんですよ。時間をかけてでも獲りに来る」

女性:「大阪からです。(ホタルイカすくいのために)トータルで3万円くらいフル装備で買ったので、3万円分のホタルイカを獲れたらいいなと思います」


ズボンの下に、ハーフパンツをはいてきた男性もいました。

男性:「やっぱり(海に)入るためですよね。大漁を狙うぞ!」

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この日に大勢の人が訪れていたのには理由があります。

“爆湧き”の条件「新月・晴れ・凪」

ホタルイカは「ある条件」がそろうと波打ち際に大量に打ち上げられるのです。それは「身投げ」と呼ばれ幻想的な富山の風景としても知られています。

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その条件は、月明かりのない「新月」前後の数日間で、晴れて気温が高く、さらに、波が穏やかな日などとされています。

取材をしたこの数日が、まさにチャンス。そして今年は史上例のない「当たり年」。富山県水産研究所によりますと3月の漁獲量は1153トンと統計を開始以来の過去最高を更新。不漁だった昨シーズンの約16倍という、地元漁師たちもおどろきの豊漁です。

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浜辺に集まった“ハンター”たちも気合十分です。

愛知県からの“ハンター”:
「きょうは10キロくらい獲りたいですね。
 もってる男なんで湧かせてみせます」
記者:
「ホタルイカすくいの魅力は?」
愛知県からの“ハンター”:
「魅力ですか、湧いたり湧かなかったり、
 そのタイミング、人生と一緒ですかね」

しかし、まだホタルイカは姿を現しませんー。

記者も胴長を着用、タモを持ちヘッドライトをつけ、万全の態勢で臨みます。

しかし、午前2時を過ぎても1匹も捕まえられないまま。ほかの“ハンター”たちも同様で、少しずつ海岸に夜の静けさが戻ってきました。
残っていた中年男性を取材していた午前2時半ごろー。男性がおもむろに海中にタモを差し込み、その中をのぞくと…。

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中年男性:
「ゴミか…ゴミだ…(ホタルイカは)幻だね」

あきらめきれず、別の海岸へ移動

記者:
「時刻は午前3時となりました先ほどまで残っていた方も帰ってついに誰もいなくなりました」

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記者は諦めきれず、移動を決断。向かった先は八重津浜より東に位置する富山市浜黒崎の砂浜です。

記者:「八重津浜と違い全くヘッドライトの明かりがありません。(濁りが少ないので)ホタルイカがいたときには発見しやすいと思います」

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しかし、そこですくったのはホタルイカほどの大きさの小魚1匹。その後も時間だけが経過。だんだんと空は白んでいき…。

記者:
「きょうはホタルイカの姿をついに拝むことはできませんでした」

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条件がそろったからといって必ず現れるわけではないホタルイカの大群。だからこそ“爆湧き”の瞬間に出会った時の喜びは、ひとしおなのかもしれません。12日から13日にかけも晴れて高い気温が予想されるためチャンスはまだしばらく続きそうです。