能登半島地震からまもなく4か月、富山県高岡市伏木地区の被災した古書店が、今月27日、営業を再開しました。様々な悩みを抱えた人たちの心のよりどころにもなっていた「話せる古本屋」が街に帰ってきました。

高岡市伏木地区。元日までこの場所に小さな古書店がありました。

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古本なるや・堀田晶さん:
「揺れ始めたと思ったら一気にこんな感じで、バキバキバキって目の前で割れていったっていう。思い出しただけでブルってします」

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「古本なるや」の店主、堀田晶(ほりた・あきら)さん。元日までこの場所は堀田さんの店舗兼住居でした。

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古本なるや・堀田晶さん:
「水が噴き出してきて、結局その時に落ちた本も水浸しになったみたいな。ただただ悲しかったっすよね。ゆっくり時間かけて集めてきた本…」

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古本なるや・堀田晶さん:
「50を目前にして住居と店舗を一気に失う、どういうことだと思いましたけど」

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閉店した理髪店を借りて、6年前、夢だった古書店を開業。

堀田さんは、生活困窮者を支援するNPOの相談員も務めていて、「なるや」で目指したのは、様々な悩みを抱えた人が訪れることができる「話せる古本屋」です。

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鼻で笑われたことを今ふと思いだした…

(2019年取材時に)やってきた常連の男性。
常連の男性:
「ハローワーク行っても…勝ち目はないような気がします」

古本なるや・堀田晶さん:
「お前結構しゃべれるようになってきとっからね、本当に」

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「なるや」の存在を知ってから、週に1回程度通っています。

常連の男性:「自分の存在を認めてくれる場所」

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気軽に誰かと話せる場所として、本好きな人や悩みを抱えた人の心のよりどころになっていました。

古本なるや・堀田晶さん:
「こんな古本屋さんみたいなとこで何ができるって感じで鼻で笑われたことを今ふと何となく思い出しました」「いろんなね、人とのつながり方もある中で、僕はこういう形でやっているっていう」

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あえて被災地の倉庫、ひっそりと開店…

店には人とのつながり方を模索しながら歩んできた堀田さんの5年半の時間と思いが詰まっていました。しかし地震で「大規模半壊」の判定を受け、引っ越しを余儀なくされました。

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能登半島地震からまもなく4か月。ほかの場所で開店しないかという誘いもありましたが、堀田さんは、あえて伏木で酒屋の倉庫を借りました。

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古本なるや・堀田晶さん:​
「とりあえずお店ができるかどうかはわかんないけども、とりあえず話せる場所は作ろうと。みんなで集まれる場所はとにかく作ろうと…」

万が一、また地震で崩れないよう広いスペースを活用して本は高く積まないことにしました。

それでも伏木で再開を決めたのは、地震によって不安やストレスを抱えた人が増えていると感じたからです。

古本なるや・堀田晶さん:
「背景になんかあったモヤモヤというかすっきりしないトラブルの火種みたいなものがこういう例えば地震、コロナみたいな有事の時にボーンと明るみにでるみたいな」「普段の何の気ないやりとりしてる人でもちょっと棘のあること言い始めるとかありますからね、何かこれまでとちょっと違うなみたいな」

「まあ、なんか役に立つことがあるんだったら」

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新しい店舗は、今月27日、伏木地区の街なか、伏木湊町(ふしきみなとまち)でひっそりと開店しました。

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地震で100冊ほどを失うが、少しづつでも…

常連の女性:
「本が戻ってきた感があって…いいね」

開店2日目の28日は、オープンの午後1時前から常連のお客さんがやってきていました。

常連の女性:
「心は安定するし安心するし、他の方たちとも交流ができて。そうですね、ほっとするところだと思います」

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たくさんの本に囲まれて、堀田さんがそこにいるだけで、出会ったばかりのお客さん同士が話し始めます。

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地震でおよそ100冊の本がダメになりましたが、これから本も少しずつ増やしていく予定です。

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変化を受け入れ、少しずつ進んでゆく…

この日、もう一人常連の女性が…。

常連の女性:
「被災したのもあって地震とか軽い風の揺れでも過敏になってる感じかなって」「集中しづらいっていうか」

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ふらりとやってきて、近況を語り、本をながめるお客さんたち。

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古本なるや・堀田晶さん:
「嬉しいわ、とにかく嬉しいわ。こうやって再開してけるっていう喜び」「やっぱり店やってよかったわ」

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伏木で面白がってもらえた「なるや」だから、もう一度伏木で。

古本なるや・堀田晶さん:
「形は変わってもやってきたことはなくならないし、新しい形でどんどんどんどんアップデートできる。結局何も失ってないよねって」

「こうなってよかったとは思わないですけど、形が変わっていくっていうか、変化を受け入れつつ少しずつでも。ひとつひとつゆっくりでも進んでいくこともできるんだなっていうのは身をもって実感した」

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堀田さんはこれからも伏木で、自分なりのやり方で、人とのつながりを作っていきます。

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