各地で連日、クマによる人身被害が相次いでいます。21日も富山県の山あいの畑や、青森県の山中で被害が出ました。クマが一番最初に狙うのは人間の顔だといいます。富山県で被害にあった男性も顔をひっかかれました。

クマに爪で引っかかれると恐ろしいことになる可能性があります。富山県では過去、クマに顔を爪で引っかかれた女性が亡くなる事故がありました。女性は顔の皮がはがれて垂れ下がった状態になり入院、傷口から雑菌が入り、その後、破傷風のような症状で死に至ったといいます。クマの爪の恐怖とは…。

TUT

21日午前11時15分ごろ、富山市大山地域の畑で80代の男性がクマに襲われました。

県などによりますと、自宅近くの畑で作業をしていた80代の男性が突如現れたクマに顔をひっかかれ、さらに右の鎖骨が折れるなど命に別状はないということですが、全治およそ1か月の重傷です。

凶器の爪…細菌によって致命傷にも

クマの生態に詳しい富山県自然博物園ねいの里の赤座久明さんはクマの爪の細菌による“危険性”を指摘します。

富山県自然博物園ねいの里の赤座久明さん:
「深い傷跡ができて、そこにいろんな雑菌が入って、破傷風みたいな症状だとか。たしか2004年の人身被害で年配の女性が、11月か10月に被害を受けて、1月に亡くなっている。ずっと入院治療をして…。そういうしばらく闘病生活を続けられたあげくにそれがもとになくなったっていう、そういう例がある。」
記者:「それは爪による被害?」
赤座さん:「顔面の皮がかなり皮膚が剥がれて垂れ下がった」

TUT

これは2018年、富山県砺波市で撮影されたツキノワグマの爪です。

前足にはそれぞれ3センチから5センチの固い爪が5本あり、爪だけで木に上れるほどの力があって強力な武器となるのです。

赤座さんによりますと、この爪で引っ掛かれると深い傷ができるだけでなく、傷に繁殖した細菌によって致命傷に至ることもあるといいます。

富山県自然博物園ねいの里の赤座久明さん:
「クマは顔を狙うんですよ。顔にダメージを加えると反撃能力がなくなることを知っているんですよね。自分に有利な戦い方っていうか。だから顔の一撃を何とか避けることですね。だけど、気付かないうちにクマが近寄ってきてバンってやられたら『ゆっくり後退りして、あまり大声で叫ばずに』って、そんな時間の余裕はないでしょう…。だから、顔の攻撃を避けるために、とにかく顔を抑えてうずくまるくらいのことしかできないと思います」

各地で相次ぐクマによる人身被害、山のレジャーや農作業をする人はクマ鈴や撃退スプレーなどできる対策をとり、山に近いエリアに住んでいる場合は、住宅や倉庫・納屋の戸締りを徹底するようにしましょう。

(2023年の取材を加味して記事にしています)