近年人気が高まって「トレイルランニング」。林道や山道など不整地の場所をマナーを守って走るスポーツです。日本国内では、ハセツネの名で知られる日本山岳耐久レースや富士山の周囲100マイル(約160km)のコースで行われる「Mt.FUJI100」などが有名です。

自然に溶け込むのが魅力の一つ

東北ではメジャーなトレイルランニングの大会は多くはないですが、気軽に参加できる大会の開催が増えてきています。
4月14日(日)に山形市と山辺町にまたがる県民の森を舞台に開催された「トレイルランナーズカップ山形」もその一つ。1周4kmの「ショート」と2周する8kmの「ロング」の2つの部門があり、約230人がエントリーしました。

会場となった山形市少年自然の家には多くの参加者が


 この大会を企画した一人の高橋和之さんです。2022年新潟で開催された山々を171km駆け抜けるDEEP JAPAN ULTRA 100で優勝するなど山形県在住で日本を代表するトレイルランナーの一人です。ここ県民の森でもよくトレーニングを行っていて、このコースを設定したのも高橋さんです。

日本を代表するトレイルランナーの一人 高橋和之さん

高橋和之さん「このコースは特に走りやすいコース。1人でも多くの人にトレイルランニングとはどういうものなのか経験する機会を作りたいなということでトレイルランナーズさんにお願いして開催していただきました。」

コースは沼のほとりや木々の間を通るもので、累積標高も4kmで約150m、8kmで約300mと初心者に優しいコースです。

沼のほとりを走るコース とても気持ちが良くなります

高橋和之さん「トレイルランニングと聞くとやっぱりランニングとついてるのでどうしても走らなきゃとか、山を走るのはきついとかそういうイメージがあるんですけど、全然歩いてでも構わないです。本当にゆっくりと自分のペースで、人と比べず、山を楽しむという感覚で走っていただけたら。」

山道はゆっくり歩いてもOK 思い思いのペースで

参加者で目立ったのが中学生や小学生、就学前の小さな子どもたち。親と一緒に楽しむ姿も多く見られました。それぞれ自分のペースで、自然の中を走ることを楽しんでいました。

おいしい空気を吸って 自分のペースで進みます


こちらはロング8kmの部に参加し、女子49歳以下の部門で3位入賞した佐々木花音さん(仙台市)。この春中学生になったばかりの佐々木さん、走ることがとても楽しいと話してくれました。有名選手に「トレイル界のアイドルを目指せ」と言われたという佐々木花音さん(仙台市)

佐々木花音さん「山走るの好きです、気持ちいいし、達成感が(魅力)。ロードは5歳ぐらいから走ってましたけど、去年から本格的に山を走り始めました。景色と山の空気、そしてスタッフや参加者の皆さんの人の良さが魅力です。挨拶してくれたり礼儀正しいので好きです。」

花音さんには大きな目標もあるようです。
目指すはぶっちぎり1位のランナー!

佐々木花音さん「いろんな大会で1位とりまくりたい!走りでみんなに勇気を与えるようなランナー、ぶっちぎり1位のランナーになりたいです。」

本気でトップを目指すランナーも、自然を楽しみたいというランナーも優しく受け入れてくれるトレイルランニングというスポーツ。
主催者であるトレイルランナーズ代表の松永紘明さんに、こうした大会を企画する狙いについて伺うと意外な答えが返ってきました。

主催団体トレイルランナーズ代表の松永紘明さん


トレイルランナーズ代表・松永紘明さん
「トレイルランニングを広めようとしているわけじゃないんです。僕が広めたいのはより自分らしい人生を歩む人、より“幸せな人が増えるきっかけ”を提供すること」


幸せな人が増えるきっかけとは?   「自分を深く知って優しい社会づくりにもつながる」

トレイルランナーズ代表・松永紘明さん
「トレイルランニングの魅力は、(自然の中に身を置く間は)自分の中に深く深く入っていける時間になること。より自分を深く知れば、自分が今後どういう人生を歩みたいのか、何をしたいのかわかってくる。そういうことを見つめられる時間を持てば持つほどより自分らしい人生を歩める。人からの評価ではなく、“自分のために生きる”ということができるようになるすごく大事な時間を提供してくれるのがトレイルランです。一言でいうとたぶん“現代版の山岳信仰”かな(笑)」

高橋さん(中央)松永さん(右)とともに大会を盛り上げた須賀 暁さん(左)東北RIZE代表 山形県出身


高橋さん、松永さんの話に共通するのが“人と比べず自分は自分”を大切にすること。
「山を走るなんて無理…」そう考える人が多いと思いますが、高橋さんたちは、走ると意気込まず、自然の中に溶け込むつもりで近くの山々に出かけてみてはと問いかけます。

自然の中で“心を整える”

自然の中に身を置くことで気忙しい日常を少しの間だけ忘れ、“心を整える”ことで、あすへの活力を得ることがことができるかもしれません。そんな魅力がトレイルランニングというスポーツにあるようです。