歴史的な円安を追い風に、輸出が多い大企業の好業績が相次いでいます。

NTTは、コスト削減などにより、営業利益は1兆9229億円。円安が影響して、海外でのインフラ事業なども好調でした。
NTT・島田明社長:「対前年比、増収増益、営業収益・営業利益・当期利益、いずれも過去最高を更新。増収のうち、為替の影響は約2000億円です」

トヨタ自動車は8日、3月までの年間決算を発表。半導体不足の解消や、世界での自動車の販売台数の増加、円安などが影響し、営業利益は、国内の上場企業初となる5兆円の大台に乗せました。
トヨタ自動車・佐藤恒治社長:「今期は意志を持って、足場固めに必要なお金と時間を使っていく。人材育成にしっかりと取り組む」

ANAも国内外からの観光需要の回復もあり、売上高・最終利益ともに過去最高を更新。ただ、柴田社長は現状の円安について、こんな指摘をしました。
ANAHD・芝田浩二社長:「心地よい円の水準は、いくらかと言われると、ずっと(1ドル)125円ぐらいが肌感覚でいいと言っている。このレベル感は、アウトバウンドにもフィットするし、インバウンド客にとっても魅力ある水準だと思う」

気候変動などでカカオそのものの相場が上がっていることに加え、円安などの影響で、輸入価格も上昇したことなどから、明治は、商品の値上げに踏み切りました。
明治HD・川村和夫社長:「当社にとって非常に重要な原料であるカカオが、倍から3倍という状況で、高騰を続けている。一時的な(為替)相場の高騰は、そんなに大きな影響はないが、高い水準が長い時間にわたり続いているところに課題感を持っている」

10日に国が発表した海外とのモノやサービスなどの取引を示す経常収支。つまり、日本が海外との貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す金額は、25兆3390億円と過去最大の黒字でした。

ただ、景気の実感になると、話は全く別です。
製造業(50代):「給料は上がったが、1回、買い物に行くだけでも、今までよりも出費はかかっていると実感している」

3月の物価の影響を考慮した“実質賃金”は、去年の同じ時期と比べて2.5%減少、過去最長となる24カ月連続のマイナスです。

なかでも、中小企業は特に厳しさを増しています。

自動車用のプラスチック部品や医療器具に使う部品の製造を行う日進工業。2年前、コロナやウクライナ戦争などで、原材料費高騰の影響を受けていました。

工場を東京から山梨県韮崎市へ移転していました。
日進工業・竹元盛也社長:「円安によって原材料費が上がった。電気代や生産に関わる経費もついでに上がっているはず。あのころから比べても、さらに1割から2割上がっている。毎年、毎年、ひっきりなしに紙が来るので」

“あの紙”とは、各取引先から届いた原材料の価格改定のお知らせです。

日進工業・竹元盛也社長:「何もしなければ、どんどん経費ばかり増えて、利益は減らされる。お客さんにもその分の価格は転嫁していく手段しか私たちにやれることはない。(原材料費高騰などの)降りかかる火の粉を払う役、私は。自分の会社を守ることは、社員を守ることにつながるから。そのためにどうするかを考える。為替と企業努力は直結しない」


我々の生活に直結する実質賃金は、いつプラスになるのでしょうか。野村総研のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英さんに聞きました。

木内さんは、「実質賃金がプラスで定着するのは、年末くらいではないか」といいます。「春闘の結果が統計に反映されるのは、5月以降だが、5・6・7月は、電気代などが上がってしまい、さらに足元では円安も進んでいるため、実質賃金が上がる時期が、“後ズレ”する。実質賃金は、歴史的な物価高騰で大幅に下がってきた。元の水準を取り戻すには、時間がかかる。それでも、消費の安定を取り戻すための、第一歩にはなり得る」と話します。