女性皇族をめぐる“重要な議論”が、ゴールデンウィーク明けに始まります。それは「皇室典範の改正」にまつわるものです。現行の皇室典範では、女性皇族は結婚後、皇室を離れると定めていますが、それが見直されるかもしれないのです。女性皇族が皇室を離れることで、どんな影響があるのか。専門家に取材すると、2つのポイントがみえてきました。(4月27日OA「サタデーステーション」)
■「公務の担い手」としての役割
皇室の人数が減り、公務の多くを女性皇族が担っている現状で、活動の機会が増えているのが、秋篠宮家の佳子さまです。
精力的に取り組まれているのが「手話」。こうした活動では、当日参加するだけでなく、事前の勉強や準備も必要になります。
「国際親善」も役割の1つ。これまでにオーストリアやハンガリー、ペルーを公式訪問していて、来月にはギリシャを訪問されることも正式に決まりました。
2021年からは日本テニス協会の名誉総裁も務められています。これは皇室を離脱した姉の小室眞子さんから引き継がれた公務です。
名古屋大学 河西秀哉准教授
「そもそもの前提としては天皇皇后お二人の仕事を支えるという役割があると思う。女性皇族が公務を担う意味として、“そういう活動があるんだ”と我々が気づかされるという側面があって、困っている人がいるんだという形で、ほかの国民も活動に参加していく呼び水になっていく役割がある。皇族が減っていくと1人1人の仕事量が増えていく」
「いまどんどん引き継いできたものが最後、愛子さまへいくという可能性があって、もう最初から3馬力やらないといけないというような可能性もある」
■すべての公務をカバーできなくなると…
この春、大学を卒業し、社会人になられてから、お出ましの機会が増えている愛子さま。
3月末には、お一人では初めて、地方を訪問されました。今月14日は、雅楽を鑑賞。さらに、今後は国際親善の役割も期待されます。2月、ケニア大統領夫妻を招いた宮中での昼食会には愛子さまも出席。ほとんど通訳を介さずに、英語で会話されたそうです。
名古屋大学 河西秀哉准教授
「(公務の)担い手が減っていけば最終的にはすべてカバーするのは難しくなってくるので、公務の数を減らすしかないという状況になるかと思う。減っていけばその分(国民が)見る機会も減るので、我々自身が女性皇族のやってることもわからなくなるし、そもそも象徴天皇、皇室自体が何やってるかわからない。関心を高めていかないと、それだけ皇室の存立基盤というのが危なくなってくるんだろうなと思う」
■男女平等めぐり“誤ったメッセージ”懸念も
女性皇族をめぐる議論の中で、関東学院大学の君塚教授が注目するのは、皇室が「社会に与えるメッセージ性」です。社会に対し”時代に合わないメッセージ”を発信してしまう懸念があるといいます。
海外の王室では、男女平等の観点から伝統を見直す動きも相次いでいます。イギリス王室でも、2013年に男女関係なく第一子が王位を継承する制度に移行しました。
関東学院大学 君塚直隆教授
「女性のいわゆる働き方だとか役割だとか、そういったものをもっと見つめ直そうっていうのは、おそらく社会全体に対する政府の動きなはずなのに、『皇室だけは別で、男性だけでやっているのはおかしいじゃないか』という風にみられてしまう。“国民とともにある”というのは、いまの象徴天皇のキーポイント。やっぱり時代と共に変わっていかなきゃいけない」
一方、女性皇族を結婚後も皇室に残すことについては、「これまでの伝統をなし崩し的に消滅させ、皇位継承資格を女系に拡大することに繋がるのではないか」といった慎重な意見も根強くあります。
長く続いてきたこの議論。皇族数の確保にむけ、結論を出すことはできるのでしょうか。
◇
高島彩キャスター
「皇族のあり方については、これまでも様々な議論というのがありましたよね」
板倉朋希アナウンサー
「過去を振り返ってみますと、2005年の小泉政権では、「皇室典範に関する有識者会議」が設置されまして、女性・女系天皇の是非などについて議論が行われて、法改正を進める予定でした。その後、紀子さまのご懐妊が発表され、法案提出が見送られました。その後、2012年に野田政権でも、女性皇族が結婚年齢に近づいたため、皇室活動の安定性から緊急性が高い課題として有識者にヒアリングを行ったりもしていました」
高島彩キャスター
「こうやって見ますと、いくつもの政権で議論を重ねられてきたと感じますね」
板倉朋希アナウンサー
「その後も安倍政権になってからも2017年、安定的な皇位継承や女性宮家の創設について意見が上がってきまして、これを受ける形で、菅政権で有識者会議が設置されました。そして岸田政権で皇族数の確保策などに関する報告書がまとめられて、国会に提出されました」
高島彩キャスター
「連休明けにも与野党で議論が始まるということですけれども、いま検討されている、皇族の数の確保、この策というのはどういったものがあるのでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー
「VTRでは、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持することについて触れましたが、もう一つありまして、旧宮家の男系男子が養子として皇族として復帰する案です。その旧11宮家は、終戦後の1947年に皇籍離脱された方々です。現在の天皇陛下との関係は、遡っていくことおよそ600年前の室町時代、御花園(ごはなぞの)天皇の父、貞成(さだふさ)親王を祖先とし、皇籍を離脱するまで26人の男子が皇位継承資格を持っていました」
高島彩キャスター
「旧宮家の男子にあたる方は、現在は何をされているかというのはわかっているのでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー
「名古屋大学の河西秀哉准教授によりますと、民間の会社に勤めていらっしゃる方や、国家公務員の方もいらっしゃるということなんですね。現在は、男子がいなく断絶した家系もあるそうで、皇族復帰に当てはまる方がどれくらいいらっしゃるのか実はわかっていないということなんです」
高島彩アナウンサー
「この対象者が明確ではない中で、具体的に議論進めていくのは難しいのかなという印象もありますけれど、いかがでしょうか」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「伝統を重んじる立場からすると、旧宮家の男系男子の皇族復帰という考え方があると思うんですけど、我々国民からすると、どなたがそういう資格者なのかよく分かりませんからね。丁寧で慎重な議論が必要だと思うのですが。とはいえ、春の園遊会を見ても分かる通り、女性皇族の結婚後も皇族の身分保持というのは、これは待ったなしの議論なのかなという気がしますね」
高島彩アナウンサー
「そうですね。こういった議論は本当に幅広い世代で行っていくべきだと思いますけれども、ゴールデンウイーク、昭和の日があって、憲法記念日もありますから、こういう事をみんなで話し合う良い機会になりそうです」
【専門家解説】女性皇族“結婚で皇籍離脱”は変わるのか?連休明けに議論スタート
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