都心最後の一等地とも言われる、旧築地市場の再開発の全容が1日に明らかとなりました。音楽ライブや野球といった用途に応じて形を変えられるスタジアムや、次世代型の交通拠点などが整備されることが発表されました。国際観光都市・東京の姿とは。


■スタジアム建設で巨人軍“移転説”は

ターレと呼ばれる運搬車がせわしくなく行き交った世界最大級の魚市場、築地。最後の営業を終えてから5年半が経ちました。

湾岸エリアの19ヘクタールという広大な土地に予定されているのは、商業施設やオフィス。街を行き交うのはターレではなく、空飛ぶ車です。敷地の4割を緑化し、目指すのは“先進的な環境共生型の街”。目玉は約5万人を収容することができる多目的スタジアムです。コンサートや野球の試合などの開催を想定しています。参加企業には読売新聞グループも名を連ねていて、プロ野球巨人軍の新たな本拠地となるのではとの憶測も出ています。

読売巨人軍オーナー 読売新聞グループ本社 山口寿一社長
「(Q.巨人の本拠地にと考えないのか)魅力あるスタジアムは当然、私共も使ってみたい気持ちはある。巨人軍の本拠地移転を前提として計画をしてきたものではない」


■地下鉄『新駅』構想と連携

さらに、地下鉄の新駅も計画されています。2040年の開業を目指す『臨海地下鉄』が東京駅から有明・東京ビッグサイト駅までを結びます。

三井不動産 植田俊社長
「市場という閉ざされた空間だったところが、もう一度世の中に開かれた空間に変わる転換点にあると考えている。築地の歴史を踏まえたうえで東京の国際競争力を高める。そういうことのために活用したい」

壮大な街づくりがスタートする築地ですが、これまで政治に翻弄されてきた経緯があります。豊洲市場への移転をめぐっては方針が二転三転。当時は、市場機能を築地に残す構想も掲げられていました。

東京都 小池百合子知事
「築地は守る。そして豊洲を生かす。(築地は)食のテーマパーク機能を有する新たな市場として」

ふたを開けてみれば、計画案に「新たな市場」はありません。隣接する築地場外市場と連携して「食文化を発信する」としています。


■変わる“食のまち”期待と不安

“食のまち”に訪れようとしている大きな変化、その受け止めは様々です。

高島屋海苔店 高島良司社長
「スタジアムができて来る人は、ここを回ってのりを買わないと思う。簡単に言っちゃうと。食には特化していないと普通の街になっちゃうから。それはそれで、うちみたいな商売は生き残れない。“食のまち”ではあってほしい。いつまでも」

吹田商店 吹田勝良社長
「(Q.率直にどう思うか)人が増えるということでうれしい。共存すればいいんじゃないですか。人が集まってくれば食べる。食べたり買ったりが増えていく。そう考えれば全然共存はできると思う」

中国からの観光客
「どういうふうに変わるかよく分からないですけれど、今も僕たちにとってはすごくいい感じのところ。外国人たちにとっては、ここは壊さなければ(良い)。来たらまた食べに来ます」

栃木からの観光客
「よろしいんじゃないですか。どんどん新しいことも今までのことも大事。残しつつ新しい方向でいくのは日本の良さじゃないか」


■“築地再開発”柱は『巨大スタジアム』

この再開発計画、スタジアムを含めた大部分が2032年度をめどに完成予定ということですが、その全容が明らかになりました。

まさに都心に位置する築地エリアは2018年の豊洲市場移転後、約19ヘクタールが更地となっていました。ここにオフィスや住宅、ホテルに商業施設など様々なビルを建設予定で、総事業費は約9000億円です。

注目されているのが“マルチスタジアム”です。観客席は可動式の“全天候・超多機能型施設”となっています。野球やサッカーなどのスポーツ大会や、コンサートをはじめとした大規模イベントなど、最大で5万7000人を収容。スタジアムの屋根は閉じたままで、人工芝を想定しているということです。

ささやかれていた巨人軍の本拠地移転については、読売新聞グループ本社の社長で、巨人軍のオーナーも務める山口寿一氏は「本拠地球場の移転には相当な調整も必要で、読売だけで決められることではない」としたうえで「国際試合の開催は考えられると思う」と答えています。

また、東京都は臨海部に新たな地下鉄の建設を計画しています。東京駅から東京ビッグサイトを結ぶ路線で、その中に最寄りとなる『新築地駅』が誕生する予定となっています。この路線の終点『有明・東京ビッグサイト駅』から、りんかい線への乗り入れも計画されていて、将来的には羽田空港への接続も検討されているということです。