23日に記録的な大雨となった沖縄や奄美地方。その南の海上には24日にも台風1号が発生する見通しです。雨のシーズンが到来し、食中毒にも一層警戒が必要になってくるなか、“伝統の味”が消える可能性も出てきました。

■今年初の“熱中症警戒アラート”

梅雨入りした沖縄県の宮古島では早々に記録的な大雨を観測。すでに平年5月の3倍以上となる700ミリ近い雨が降りました。

心配は尽きません。23日、フィリピン沖の海上に熱帯低気圧が発生。発達し、24日には台風1号となる見通しで、来週には沖縄本島に近付く恐れもあります。

ノースリーブで出歩く人もいた石垣島。今年初の“熱中症警戒アラート”が発表されました。湿度は昼間でも80%以上とジメジメした1日に。梅雨前線に流れ込む暖かく湿った空気が原因です。


■消える直売所の“梅干し”

この『梅雨』。諸説ありますが『黴雨』と書くこともあったとか。黴はカビなどのバイ菌のこと。これからは食中毒の季節でもあります。

梅の産地、和歌山県。地元の野菜などを扱う直売所では、食中毒に“なりにくい”との言い伝えもある梅干しを、4つの農家が持ち込み販売していました。ただ、来月からは食品衛生法の改正に伴い、その数は減る可能性があります。

改正のきっかけは12年前に起きた集団食中毒事件。白菜の浅漬けを食べた8人が死亡し、梅干しを含む漬物作りに高い衛生基準が導入されることになりました。これからは梅干しなどの漬物の製造販売は、衛生面での設備を整えるなど保健所の“許可”が必要となります。

地元の買い物客
「消費者にとっても手作りの物が入ってきにくいことは寂しい」


■新たな“設備投資”4000万円

農家の対応も割れています。

うめひかり 山本将志郎代表(30)
「(Q.いっぱい地面に落ちてる)そうです。(Q.落ちたらダメなのかと)その方が極上の梅干しになります」

梅農家の山本さん。祖母が漬けた梅干しが大好きだといいます。保健所の許可を得るため、設備投資に踏み切りました。

うめひかり 山本将志郎代表
「網戸を入れて、風は通るけど虫は入ってこないようにしている。(Q.網を新しく追加した)そうですね。最近ですね。それぞれの経路で異物が混入しないような対策が必要」

蛇口は指先が触れないようなものに。工場の床は排水が十分にできなければなりません。他にも保管用の冷蔵庫や更衣室の設置など。新たな設備に投じた額は約4000万円にもなりました。

うめひかり 山本将志郎代表
「次の世代につないでいきたい。お金はかかるけど、自分たちがやっていかないといけない。塩とシソだけで漬けている梅干し。梅農家は小規模が多いので、そういう人の中ではやめる方の声もたくさん聞きます」


■守りたい“伝統の味”…悩む農家

全ての農家が設備投資に動いたわけではありません。両親と妻、4人で梅干しを作っている野久保太一郎さん(50)は迷っていました。

梅農家 野久保太一郎さん
「うちの年収からいって数百万の投資は、それをいつ回収できるのか考えなければならないので」

直売所への持ち込みは3月を最後にしていません。

梅農家 野久保太一郎さん
「改正法で全部の加工物を一律でやってしまうと、今回のように梅干しが対応できない農家もある。そもそも梅干しは保存食。塩分20%濃度を守っている場合に対しては、もう少し緩めの基準でもいいのかな」