国民年金保険料の納付期間の5年延長など、年金に関する厚労省の議論についてお伝えしたところ、視聴者の皆さんから2000件を超える反響がありました。

■国民年金納付5年延長案 負担と給付 いくら増える?

視聴者の皆さんからの声です。
「5年延長と言うが、ただでさえ生活に困窮しているのに。現実厳しいのでは」
「結局のところ、支払期間を5年延長して、給付額はいくら増えるのか」

5年延長案は、国民年金保険料の納付期間を『60歳まで』だったものを『65歳まで』、5年延長しようとするものです。これにより負担額は単純計算で101万8800円増えます。

武見厚労大臣は4月19日、「給付費は年間で約10万円増加するという前提で、2019年に試算を行った」と発言しています。

■公的年金制度「100年安心」は本当か

『100年安心』とも言われた現状の年金制度は、本当に大丈夫なのでしょうか?

視聴者の皆さんからの声です。
「『100年安心』と言ったことが間違っていたのか?」
「高らかに言っていた『年金100年安心』、『100年後でも絶対大丈夫』とは何だったの?」

『100年安心』という言葉です。
2004年、当時の森厚労副大臣が「現在生まれた子どもが、ほぼ受給を終える2100年までの約100年間の財政バランスをとる。100年後でも絶対大丈夫」
当時の坂口厚労大臣も「100年安心にしたいと思っている」という発言していました。

現在の日本の公的年金制度は、賦課方式で運営されています。
現役世代が納めた保険料が、その時の年金受給者への支払いに充てられる方式で、現役世代から受給世代への仕送りに近いイメージです。

高齢者1人を支える現役世代の人数です。
1960年は『胴上げ型』と言われ、現役世代11.2人で高齢者1人を支えていました。
2010年には2.8人で高齢者1人を支える『騎馬戦型』になり、2025年は2人で高齢者1人を支え、2050年には『肩車型』と言われる1.4人で高齢者1人を支えることになると言われています。

こうした現役世代の減少に対応するために2004年に年金改革関連法案が成立し、将来の少子高齢化を見据えて、年金受給額を抑制する『マクロ経済スライド』が導入されました。

『マクロ経済スライド』というのは、物価や賃金の上昇より年金額の引き上げ率を低く抑えるというものです。

2024年度の夫婦2人の厚生年金の受給額でみてみます。
2023年の物価の上昇率は3.2%でした。年金受給額も同じ上げ幅で計算した場合、2024年度の受給額は月23万1665円となります。マクロ経済スライドが適用されたため、実際の受給額は月23万483円でした。差額は月1182円で、年間で約1万4000円のマイナスで実質的な減額です。

明治大学大学院の田中教授によると「マクロ経済スライドが導入され、年金財政は安泰。しかし、高齢者の貧困の予防になっていないという大きな問題がある」ということです。

■広がる高齢者の経済格差 『参考にすべき』カナダ方式とは

日本と似ているカナダの年金制度をみていきます。視聴者の皆さんの声です。
「国民年金の6万8000円では生活できない」
「国民年金保険を一生懸命納めても、支給額が生活保護より低いのはおかしい」
「高所得者から無職まで年金保険料が同じなので、金持ちほど負担が少ない」

日本の年金は、自営業の方などは国民年金、会社員や公務員などは国民年金と厚生年金を受け取れます。

■日本の年金の問題点

明治大学大学院の田中教授が指摘する、日本の年金の問題点です。
●基礎年金(国民年金)の受給額が低く、今後さらに削減される見込みであること
●年金を受給できるのは保険料を納めた人
●低所得者ほど“負担感”が大きいこと
こうしたことによって「高齢者の貧困が拡大する」ということです。

日本と制度が似ているカナダについて見てみます。田中教授が指摘する、カナダの年金の良い点です。
●基礎年金を国民が全員受給できること
●所得格差を緩和していること
こうしたことによって、「高齢者の貧困が日本に比べて少ない」といいます。

カナダの年金の良い点の1つめは、国民が全員受給できることです。
カナダの公的年金には、『基礎年金』と『カナダ年金』があります。『基礎年金』は、対象が国民全員です。給付額は満額で月約8万円、75歳以上は1割増しになります。
財源は税収なので、年金保険料の徴収はありません。これにより『国民皆年金』を実現しています。
『カナダ年金』というのは日本の厚生年金にあたります。
対象は、自営業、会社員、公務員などです。給付額は65歳時の満額で月約15万4500円で、報酬額に比例します。財源は社会保険料で、雇用主と労働者が折半して負担します。自営業者は全額自己負担になります。

カナダの年金の良い点の2つめは、所得格差の緩和です。
低所得者には、『基礎年金』に加え、『所得補償』として補足の給付があります。

例えば単身の場合、年収約245万円以下だと、補助金が月額最大約12万円給付されます。そして高所得者には、『基礎年金』に税が課されて実質削減されます。
例えば年収約925万円を超えると、その超過分の15%を納税する義務が生じます。高所得者は、『基礎年金』が削減されますが、それを『カナダ年金』や『私的年金』で補うことになります。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年4月24日放送分より)