3月は中国にとって「政治の季節」だ。
年に一度の「全人代」=「全国人民代表大会」に合わせて「国会議員」にあたる代表たちが3000人近く、北京に集まるのだ。

去年の全人代はコロナの余波が残っていて、少数の選ばれたマスコミだけが取材できるクローズドの形式だった。

今年は5年ぶりにマスコミに対して原則オープンの形で行われたが、取材して感じたのは、「安全重視」で、失言によるリスクをなるべく減らそうという姿勢の強さと、「習近平氏を核心とする共産党」への一層の権力集中だ。

中国便り20号
ANN中国総局長 冨坂範明  2024年3月

■野党のいない「国会」 ぶら下がりは可能だが…

久しぶりにマスコミにオープンになったということもあり、人民大会堂には会見場の部屋に入りきらないほどの多くの記者が詰めかけた。しかし、自由な取材ができるかというと、なかなか難しい。

まず取材機会として考えられるのが、入場と退場の際に国会議員に当たる「代表」に対して行う「ぶら下がり取材」だが、本音はなかなか話してくれない。

なぜなら中国の「民主主義」は西側諸国とは違う「中国式の民主主義」だからだ。中国共産党の指導の下に民意を集中させる「民主集中制」もその特徴の一つで、簡単に言うと「野党」の存在を許さない形の民主主義ともいえる。

そういうわけで代表たちのぶら下がりでも、敏感なテーマに対しては「党を支持します」という紋切り型の答えが多くなる。また、ぶら下がりに答えてくれるのは民間企業や農業従事者など「一般の代表」の人が多く、実権のある地方幹部などは、失言によるリスクを考え、取材を拒否する人がほとんどだった。

私が2014年に最初に取材した全人代は習近平政権が発足したばかりで、地方幹部でも、リスクをとって発言する人がいた。当時、腐敗問題に揺れていた四川省のトップが会見終わりで予定外の記者の質問に答え、「多くの高官が調査されている」と率直に答えたのを覚えている。

習近平政権が3期目に入り、権力集中を進める中で、失言リスクを恐れる姿勢が、ますます高まっていると実感する。

ぶら下がり取材をうける代表
ぶら下がり取材をうける代表


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