東京でもパンの本場・フランス並みの本格的なバゲットを売っているお店が増えてきました。有名店はもちろん、地元の商店街や、住宅地の一角の知る人ぞ知るパン屋さんでも発見することがあります。この記事ではデザイナーのINDULGEさんが、小麦粉や酵母にこだわって作っている、味わい豊かなバケットが人気の高円寺のパン屋さんをご紹介します。


味わい豊かな国産バゲット
 はじめてパリで焼きたてのバゲットを食べた時の印象は今でも覚えています。カリッとした表面の皮(クラスト)に、気泡多めのもちっとした内側(クラム)。もともとパンの「端っこ」が好きだった筆者は、クラストの美味しさに感動したものです。

 2001年に八重洲に「PAUL」が、2003年に渋谷に「VIRON」がオープンするなど、東京でもフランス並みの本格的なバゲットをいただくことができるようになりました。フランスから小麦粉を取り寄せ、現地と同じ製法、技術で作られたフランス流のバゲットです。

 その一方で、国産小麦や天然酵母にこだわって、じっくりと時間をかけて発酵させた、独自のバゲットも近年登場するようになりました。国産小麦を使用したバゲットは小麦の風味が強く出て、独特のうま味や味わいを感じ取れます。フランス流のバゲットに比べ、ちょっと無骨で味わい深いバゲットです。

 この記事では、国産小麦100%を使用した、現在筆者がハマっているバゲットを取り上げます。味わい豊かなバゲット、そしておすすめバタールもご紹介しますね。


●【高円寺】しげくに屋55ベーカリー
 高円寺駅北口を出て2〜3分ほどの、スーパーや飲食店が並ぶ裏通りの一角に、「しげくに屋55ベーカリー」はあります。グルメレビューサイト「食べログ」で「パン TOKYO百名店2022」にも選出された、時間帯によっては行列必須の人気店です。

 「パンを通して、ヒトとモノとコトを耕す」というコンセプトの小さなお店には、地元住民のみならず、遠方からも買い求める人々でにぎわっています。

 ウッディな枠がシックなガラスショーケースには、ハード系からベーグル、総菜パンまでが並んでおり、どれもおいしそうで、どれを選ぶかほんとうに悩みます。レジでのオーダーまで順番を待ちながら、アレコレ悩むのが楽しいひとときになります。

 入店と同時に最初に目に入る、上段に鎮座しているのが、今回の主役であるバゲット。思いのこもったネーミングや手書きの説明を見ていると、いただくのがますます楽しみになってきます。「しげくに屋55ベーカリー」にはバゲットが2種類あり、そのほか太め幅のもっちりしたバタールも。それでは、ひとつずつの特徴をご紹介していきます。


●「2日間熟成させてつくるレトロ・バゲット北海道」
 北海道産の小麦「春よ恋」と「きたほなみ」などをブレンドした「2日間熟成させてつくるレトロ・バゲット北海道」。ショーケースに貼られたカードには「中のクラム(生地)の部分がクリーミーです。料理に合わせやすいバゲットです」と説明されています。

 「きたほなみ」を酵母に使い発酵させているため、「春よ恋」が持つ甘味や華やかさを感じつつも、「きたほなみ」のサクサクと軽快な皮の香ばしさを楽しめます。粗目も細目も混在した気泡で、かみ締めると小麦の風味を感じます。


●「2日間熟成させてつくるレトロ・バゲット佐賀県産」
 小麦は佐賀県産の「さちかおり」のみを使用したという「2日間熟成させてつくるレトロ・バゲット佐賀県産」。「さちかおり」は、日本初のフランスパンに適した小麦だそうです。ガリッと焼き込んだバゲットは、歯切れ良く、クラストの味わいをしっかり楽しめます。

 あえて粉をブレンドせずに「さちかおり」の小麦粉のおいしさを追求したこちらのバゲット。説明には「皮に厚みがあり、味も濃いバゲットです。しっかりとしたバゲットがお好きな方にはおすすめのバゲット」とあります。

 しっかりとした味わいながらも、後味は繊細。巧みな粉使いや、酵母の力と発酵の力を感じられます。エシレバターを塗って食べたら、ペロリと1本完食しちゃいそう。


●「2日間熟成させてつくる庄司さんのライ麦粉のバタール」
 北海道・十勝音更町にある庄司農園で育てられたライ麦を使用した「2日間熟成させてつくる庄司さんのライ麦粉のバタール」。生産者・庄司さん自身がていねいに石臼で挽いたライ麦粉を配合したバタールです。庄司さんへのリスペクトが伝わりますね。

 口に含むと広がるライ麦の香りとほのかな酸味。太めのバタールサイズのため、程よく水分が残り、香ばしさと同時にもっちりとした食感を味わえます。ライ麦由来の旨味も甘みをしっかりと感じられる、お食事にぴったりなパンです。


バゲットの味わい比べを!
 フランスだとバゲットは「une baguette」と、女性名詞になりますが、「しげくに屋55ベーカリー」のバゲットは、なんとなくハンサムで男性っぽいイメージ。いちどハマるとやみつきになりますよ。

 2種類のバゲットを比較すると、小麦によってこんなに味わいが違うのか、と、驚いてしまいます。土日限定のレアなバゲット「自家製酵母のレトロ・バゲット」(453円)もあるので、週末に、バゲット好きを募って、「味わい比べ」をしてみてはいかがでしょうか?


■しげくに屋55ベーカリー
住所:東京都杉並区高円寺北3-22-9 大陸コーポ1F
TEL:03-5356-7617
定休日:火曜
営業時間:10:00〜20:00(売り切れ次第終了)
アクセス:JR 高円寺駅より徒歩2分
東京メトロ丸ノ内線 新高円寺駅より徒歩12分