アップルのiPhone用OSが、2023年9月に「iOS17」にアップデートしました。それにともないアップル純正の無料地図アプリ「map(マップ)」も進化しているようです。まだグーグルマップよりも使っている人が少ないといわれるアップルのマップですが、使い勝手はいま、どうのでしょうか。実際に走ってみました。

iPhoneの「マップ」の現在の実力を実際に試してみた

 ご存じのように、スマートフォンのOSは「Android(アンドロイド)」と「iOS」の2つに大別されます。

 グローバルで見れば、海外ではAndroidの普及率が高く、その調査を見ても多くが6〜7割に達しているとの結果が出ています。しかし、その一方で日本ではその逆。Androidが3〜4割にとどまり、iOS、つまりiPhoneを使っている人が圧倒的に多いのです。

 ならば当然、地図アプリもiOS標準の「Appleマップ」を使っている人が多いかと思いきや、これが「Googleマップ」の利用者のほうが多いというから驚きです。

 その理由として挙げられているのは、2012年にAppleマップが登場した際、地図データに誤りが多く発生して、信頼性が損なわれたことがあるとされています。

 ただ、それから10年以上が経ち、さずがに今ではその誤りもほとんど解消されたようです。過去のトラブルを知らない若い人は、普通にAppleマップを使っているという報告もあります。そこで、Appleマップの“今”をチェックしてみようと思います。

 そもそもAppleマップは、クルマ以外にも徒歩や公共交通機関、自転車、ライドシェアなどに対応して案内するアプリです。

 徒歩モードの場合はクルマが走れない公園内や階段といった道路も対象に案内し、公共交通機関を選べば徒歩を含めた現在地からの目的地までの乗換手段を案内してくれたりします。

 また、案内ルートの条件として、クルマ(ドライブ)モードでは高速/有料道路を避けたり、徒歩/自転車モードでは坂道を避けたルートで案内することが可能です。つまり、機能面ではGoogleマップと同等に作られていると言っていいでしょう。

 他にGoogleマップの「ストリートビュー」のような指定場所を360度の実画像で見回せる「LooK Around」機能も用意しています。まだエリアでGoogleマップまでに追いついていませんが、少しずつ拡大してきているようです。

 こうしたAppleマップですが、今回はカーナビとしての機能をチェックするのが目的。ドライブモードを選んで検証を行いました。その方法はiOS17にアップデートしたiPhone11単独と、60系プリウスのインフォテイメントシステムに接続する2つで行っています。

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 まずは目的地の検索からです。iPhone単独では、文字入力以外に音声でも探せました。その認識率はとても高く、対象を間違えることはほとんどありません。操作はとても快適で、これなら目的地変更もドライブ中のわずかな時間で簡単に行えそうです。やっぱり運転中のインターフェースは音声認識であることを実感させられます。

 一方、プリウスと連携した場合では、音声認識は使えず画面上での手入力のみの操作となります。フリック操作にも非対応あるため、キーを何度もタップするトグル入力で操作することになりました。

 ただ、検索結果そのものはiPhone単独で行った場合と同じです。

 キーワードは「近所の◯◯」と入力するとコンビニやファミレスなどの施設がすぐにリストアップされ、施設名や住所がわかっていればダイレクトに入力しても対応してくれました。

 また、施設名はかなりマイナーな対象でも検索できるようで、たとえば成田空港周辺の撮影スポットとなっている公園も一通りカバー。地名を加えたレストラン検索にも対応できていました。この辺りの使いやすさはよくできていると思います。

 ただ、Googleマップでは対応できる「お腹減った」とかの曖昧なキーワードや、「電話番号」での検索では対応できません。やはり相対的に検索能力ではGoogleマップに大きく見劣りするようです。またGoogleマップからの転送にも非対応でした。

 目的地が決まったらルート探索です。「おすすめ」「最速」を含めた3ルートが表示され、それぞれ交通情報に基づいて所要時間も案内されています。

 交通情報はシステムを提供するオランダのTomTom(トムトム)が収集したもので、この情報をジオテクノロジーズの地図上に反映させているようです。ルートには経由地を追加することも可能で、なんと最大13カ所まで設定できました。これは車載カーナビ以上のスペックと言えます。

地図データをダウンロードして、オフラインでも使えるようになった

 ルート設定を終えてスタートすると、住宅街から幹線道路に出るまで家形図を含んだ詳細マップで誘導。交差点拡大図は表示しないものの、オートズームが作動するので交差点の様子はよくわかります。

 ただ、複雑な交差点では、ランドマークが表示される交差点拡大図があったほうが安心度は高いでしょう。

60系プリウスのインフォテイメントシステム上でルート探索。条件別に最大3ルート案内するのはiPhone単独での場合と同じだ

 幹線道路に出てからは、すぐに次の曲がる交差点名と距離を案内します。地図はタテ表示オンリーですが、全体に見やすく表現されていて、3D表示での建物の形状も規模感がわかって状況把握もしやすく感じました。

 案内ルート上には信号や交通状況を含めてあり、一番上には分岐する交差点までの距離や方角をカウントダウンしながら表示するので、分岐のタイミングはつかみやすいです。特に、分岐する交差点の前に別交差点がある場合は「この交差点を通過して次の・・」というふうに案内するので、これは勘違いを防ぐのにも役立ちますね。

 一時停止の場所では音声と共に地図上にその標識を表示して知らせていました。これはうっかりミスをなくすのに役立ちます。

 また、このルートはあらかじめ登録しておいた別のiPhoneに展開することができる仕様になっていて、これを使えば指定した場所での待ち合わせにも役立ちそうです。

 iOS17で見逃せないのは、一定エリアの地図データをダウンロードして、オフラインでも使えるようになったことです。これを使えば圏外になりそうな場所を走る時、あらかじめダウンロードしておくことで対処できます。

 これはGoogleマップではすでに対応していた機能ですが、ようやくAppleマップでも実現しました。県境や山間を走行することが想定される時に準備しておくといいでしょう。

 ただ、カーナビとして使うことを前提とした時、不満な点がいくつか散見されました。

 たとえば、車線ガイドは初めてのエリアでスムーズな運転をするのに欠かせない機能ですが、これが都心ではほぼ網羅しているのに郊外では複数車線でも案内しないことが多いのです。右折専用レーンがあっても案内しないこともあり、これはきちんとサポートして欲しいと思いました。

 また、交差点名の読み上げは基本的に行わないのも残念です。前述したように、読み上げたのは分岐してから新たな道路に入った時のみ、分岐点までの距離と進行方向を含めて案内していただけでした。交差点名との連携ができるなら、分岐するタイミングでも交差点名の読み上げは行って欲しいものです。

 また、ルートを間違えて元の道へ復帰する場合も、ひたすらUターンで対応させようとするのも感心しません。とくにカーブで見通しが悪い交差点でもこの案内を表示するなど、これは現場を把握しない機械的な案内に思えてしまいます。

 カーナビとして安全な誘導を前提とするなら、基本的にこのような誘導を避けるべきではないでしょうか。

GPS信号をロストしても案内を継続した

 一方のプリウスではヨコ表示だけとなるものの、当たり前ですが、表示する内容は単独で使ったのとほぼ同じです。車線ガイドでも違いはありません。

 ただ、CarPlayとの連携では、スマホ側で交差点名を含めたターンリストを表示するので、これとディスプレイオーディオ側の地図と組み合わせて使えば事前に進行方向がわかって便利になると思います。

60系プリウスのインフォテイメントシステムでのAppleマップ展開例。ルート上に表示された交差点名や信号、交通情報もひと目でわかる

 さらにプリウス(トヨタ系のナビ?)だけの対応かもしれませんが、メーター内にも分岐点までの距離と、交差点名、進行方向までも表示していたのはプラスポイントです。

 一般的にCarPlayが起動すると、車載システムとは関係がなくなることが多い中で珍しい事例かと思います。とはいえ、ディスプレイオーディオが増えてきている中で、今後はこうした対応が増えてくるのかもしれません。

 それとスマホを使ったカーナビアプリでよく言われるのが、GPS信号をロストした時の対応です。

 Appleマップはスマホ内にある簡易ジャイロを使うことで案内を継続できます。その状態で車両が停止しても自車位置はきちんと追従していました。

 カーナビアプリの多くはGPS信号をロストすると同時にほとんどが測位を停止してしまいますが、少なくともAppleマップはそうした状況にはなりません。

 ただ、その状態で分岐した場合は確実に対応できるわけではなく、うまくいく時もあればダメな時もあるといった状況。ビル街を走行中に自車位置が不安定になることもありましたし、やはり測位の安定性を踏まえれば車載カーナビには敵わないのは確かなようです。

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 カーナビとしての機能だけを考えると、Appleマップはまだ機能面で物足りなさを感じるのは正直なところ。

 とはいえ、ソフトウェアのアップデートでその改善はいくらでも図れるのも確かです。

 若い世代を中心に利用者は増えている現状を踏まえれば、アップデートでの進化に期待がかかります。まさに今後が楽しみなアプリであると言えるでしょう。