バブル期の日本を大いに沸かせたフェラーリ「F40」。「20世紀最高のスーパーカー」とも称されるF40ですが、極上コンディションの1台がオークションに出品されるようです。
数々の伝説をもつ「20世紀最高のスーパーカー」
「20世紀最高のスーパーカー」を挙げた時、もっとも多くの人がその名を挙げるであろう1台がフェラーリ「F40」です。
1987年、F40はフェラーリ創立40周年を記念した限定モデルとしてフランクフルト・モーターショーで世界初公開されました。
1984年に発表された「288 GTO」に次ぐスペチアーレ・モデル(スペシャル=限定モデル)であるF40は、まさに公道を走るレーシングカーそのものでした。
楕円鋼管チューブラーフレームに、アルミニウム、カーボンファイバー、ケプラーなどの最新素材を組み合わせたボディと、最低限に抑えられた質素な内装の組み合わせにより、F40の乾燥重量はわずか1100kgに抑えられています。
そのミッドシップに搭載される2.9リッターのV型8気筒エンジンは、最高出力478馬力、最高速度は320km/hオーバーと、当時としては驚異的なパフォーマンスを誇っていました。
ただ、F40の最大の魅力は、その斬新かつ合理的なエクステリアデザインにあると言われます。
ピニンファリーナのデザイナーであったレオナルド・フィオラバンティ氏によるそのボディワークは、高い空力性能と軽量化を両立しており、なおかつ、多くの人を魅了する官能的な部分も兼ね備えています。
一方、F40にはドライバーをアシストする装備はほとんど搭載されておらず、快適装備やインテリアの加飾もほとんどありません。
そのため、F40を乗りこなすには相応の腕前と覚悟が必要でしたが、バブルに沸く当時の日本には、数多くのF40が輸入されてきました。
その大半は資産運用のための売買に用いられたと言われており、5000万円という新車価格に対し、2億5000万円程度で取引されることもめずらしくなかったようです。
その様子は一種の社会現象となり、土地売買によって財を成す人が多かった当時の世相に合わせて、F40は「走る不動産」とまで呼ばれるようになりました。
F40には、こうした逸話が少なくありません。そうした点も含めて、F40はやはり「20世紀最高のスーパーカー」のひとつであることは間違いありません。
極上コンディションのF40がオークションに登場へ!
日本における需要の多さも手伝い、F40の総生産台数は、フェラーリのスペチアーレ・モデルとしてはかなり多い1300台あまりとなりました。
ただ、カルト的な人気を持つモデルであるために、中古車市場に出回ることは決して多くはありません。
そんななか、現地時間2024年5月31日から6月1日にかけてカナダ・トロントで開催されるオークションでは、極上コンディションのF40が出品されることが明らかとなりました。
F40を代表するボディカラーである「ロッソ・コルサ」をまとったこの1台は、1990年3月1日に出荷された後、大阪のコレクターのもとにわたったとされています。
その後、2人の日本人オーナーによって丁寧に管理され、2015年にイギリスの著名なフェラーリ専門ショップに売却されました。
その時点で生産からおよそ25年が経過しているにもかかわらず、このF40の総走行距離はわずか1150kmだったといいます。
その後、このF40は数々の整備が施され、2016年2月には「フェラーリ・クラシケ」による公認を得ています。
そのコンディションの良さもさることながら、この個体はアジャスタブル・サスペンションと触媒コンバーターを装着していない、いわゆる「ノン・キャット/ノン・アジャスト」の時代のモデルであるという点も、高く評価されています。
オークションの主催者であるRMサザビーズによれば、このF40の予想落札価格は275万ドル〜325万ドル(約4億1700万円〜約4億9300万円)であるといいます。
新車価格はもちろん、バブル期の日本における価格をも超えることが予想されていますが、これほどのコンディションのF40が今後市場に登場する可能性を考えると、決して高すぎるということはないのかもしれません。
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同オークションでは、このF40のほかに、「F50」や「エンツォ・フェラーリ」、「ラ・フェラーリ」といった「スペチアーレ・モデル」も出品される予定です。
いずれも5億円前後の予想落札価格が設定されており、オークションの結果に注目が集まっています。