スバルでもっとも美しいといわれるクーペが、アメリカのオークションサイト「Cars and Bids」に登場して話題になっています。いったいどのようなクルマなのでしょうか。
最初で最後になったイタルデザインのスバルGTカー
スバルは1980年代に誕生した「レガシィ」でステーションワゴンの火付け役になり、大きく発展していった自動車メーカーです。
また、水平対向エンジンやラリーなどで活躍した4輪駆動技術などが魅力ですが、そんなスバル独自のメカニズムをふんだんに投入した希少なラグジュアリークーペが米国のオークションに登場し注目を集めています。
そのクルマは「アルシオーネSVX」で、スバル史上もっとも贅の限りを尽くしてつくられたクルマとして、いまなお高い支持を得ています。
アルシオーネSVXは1989年の東京モーターショーに登場したコンセプトモデルのデザインほとんどそのまま、2年後の1991年に発売されたクルマで、当時は大きな話題となりました。
最大の特徴はイタリアを代表する工業デザイナーである、ジョルジェット・ジウジアーロ氏率いるイタルデザインにデザインを依頼したことです。
アルシオーネSVXは、ジェット機のキャノピーのようにキャビンのほとんどをガラスエリアで覆うことで、ジウジアーロらしい印象的なフォルムとなりました。
また、フロントグリルとヘッドライトをクリア素材で繋ぐ手法やリアタイヤハウス付近まで大きく回り込んだリアコンビランプは、類をみないデザインながらもスバルらしさをしっかり継承しています。
インテリアは社内デザインチームが担当しましたが、独特な形状のヘッドレストや完全オリジナルのセンターコンソールなど、アルシオーネSVXのスペシャリティ感を出すのには十分でした。
パワートレインはフラッグシップモデルらしく、3.3リッター水平対向6気筒エンジンを搭載し、駆動方式はスバルらしいフルタイム4WDを採用しています。
スバルのフラッグシップGTカーから発生される最高出力は240ps、最大トルクは31.5kgmとなっていて、大人のGTカーらしいピークパワーよりもトルクを重視したセッティングといえるでしょう。
また、アルシオーネSVXは国内専売モデルではなくグローバル展開されており、北米以外でも欧州などでもリリースされていました。
ただし、発売時期がバブル崩壊と重なったため、日本での販売台数は伸び悩み、販売比率は25%程度に留まりました。
4WSを備えた「バージョンL」が米国オークションに登場
そんなアルシオーネSVXの日本仕様が、アメリカのオークションサイト「 Cars and Bids」に出品されて話題になっています。
今回の個体は、1992年式のモデルで上級グレードのバージョンLが出品されています。
バージョンLは技術の集大成ともいえるモデルで、当時では希少だった電子制御の4WSを備えたモデルです。
ボディカラーはダークグレーで、SVXらしいシックな佇まいとなっています。
エクステリアは素の良さを活かすためにオリジナル状態ですが、ホイールのみ17インチのEnkei EV5に換装済みです。
インテリアもオリジナルの状態で、ブラックの専用レザーシート、オーディオの調整が可能なマルチファンクションステアリングなどが備えられています。
走行距離は約12万1300kmで、年式の割には低走行車といえるでしょう。
全体的な状態としては、外装周囲に多少の欠けや傷があり、運転席側ドアミラーキャップの塗装剥がれがあります。
ほかにも経年劣化によるウインドウパッキンの破損とレザーシートの摩耗やひび割れ、木製インテリアトリムに割れがあります。
また、後部サイドウィンドウスイッチが作動せず、助手席ウィンドウは運転席側のスイッチによってのみ作動するようです。
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今回の個体は欠陥が多数あるものの、絶対数が減少傾向のアルシオーネSVX バージョンLということもあり、入札件数は10件を超えました。
ここまでコストのかかった、スバルのスペシャリティクーペの登場は、今後も困難が予想されるため、まだまだ愛され続けることでしょう。