2023年はドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」、ディズニー+オリジナルシリーズ「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」、 映画「ヴィレッジ」など話題作への出演を果たした奥平大兼さん。いま最も注目を集める彼が鈴鹿央士さんとW主演を務めた映画「PLAY! 〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜」が2024年3月8日に公開された。「eスポーツ」を題材にした本作の撮影秘話や共演者とのエピソードなどを語ってもらった。

■映画終盤に向けて「翔太の成長をしっかりと表現することを大事にしました」
――eスポーツを題材にした日本初の劇映画となる本作への出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

【奥平大兼】僕はゲームがすごく好きでeスポーツも昔から知っていたので、出演が決まったときはすごくうれしかったです。いつか共演するかもしれないなと漠然と思っていた鈴鹿央士くんとW主演で、台本を読んでみたら青春映画の要素がたくさん詰まっていたので、いろいろな意味でワクワクしました。

――奥平さんが演じた翔太は複雑な家庭の事情を抱えていながらも、あまりネガティブな感情を見せず、周りへの気遣いができる魅力的なキャラクターだと感じました。奥平さんは翔太をどんな風に捉えて演じられたのでしょうか?

【奥平大兼】翔太は金髪にピアスというヤンチャな外見で、親の問題を抱えていますが、弟たちには優しく、友達と一緒のときは明るくて気遣いができるいい子という印象を受けました。

たとえば、央士くん演じる達郎と小倉(史也)さん演じる亘がゲーム中に喧嘩をし始めると、「もうやめましょうよ」とか「ケンカしないで練習しましょうよ」のようなことを言って、丸く収めようとするんですよね。そうじゃないと2人はずっと衝突していますから(笑)。なのでそういう部分は意識して演じていました。

――「全国高校eスポーツ大会メンバー募集」のポスターを見たことがきっかけで、達郎たちと出会ってから翔太が生き生きしていく姿が印象的でした。

【奥平大兼】熱中できるものを探していた翔太は、達郎やロケットリーグ(ジャンプやロケット飛行ができる特殊な車を操作してサッカーを行う架空のスポーツを題材としたゲーム)と出会い、どんどん変わっていきますよね。そこは自分の中ですごく重要だと思ったので、終盤に向けての翔太の成長をしっかりと表現することが、演じるうえでの軸になっていたように思います。

――終盤にはeスポーツ大会の決勝戦のシーンがありますが、そこに向けての変化を軸にしていたということでしょうか?

【奥平大兼】そうですね。あともう1つ意識したのは、ラストシーンの先を想像すること。翔太や達郎、亘の人生は決勝戦のあとも続いていくので、“今後あの3人はどうなっていくのか”ということも考えながら演じるようにしていました。

――ちなみにゲームの練習はどのぐらいされたのでしょうか。

【奥平大兼】練習時間はそんなに多くなかったんですけど、撮影直前はロケットリーグのプロチームで活動されている方に教えていただきながら練習しました。それなのに全然うまくならなくて…。

――特殊な動きをする車を動かすサッカーゲームですし、ゲーム画面の映像を観ていて難易度が高いことがなんとなく伝わりました。

【奥平大兼】初心者でも遊び感覚なら楽しめると思うんですけど、大会に出るとなるとレベルの高い操作が求められるので、すごく難しかったです。ゲーム画面の映像のような技はもう少し練習しないと無理ですね。でも映画をご覧になった方には一度ロケットリーグにトライしてみてほしいですし、公開後にeスポーツが盛り上がったらいいなと思っています。

■休憩中にロケットリーグと2人が好きなK-POPアイドルの動画ばかり観ていたので「おかげで僕もK-POPにハマりました(笑)」
――3人でゲームを練習するシーンが多かったですが、大会の決勝戦以外はそれぞれの家でプレイしていました。撮影は別々で行われたのでしょうか?

【奥平大兼】ゲームを練習しているシーンの撮影のときは、自分が映らなくても現場に行っていました。映画では3人で同時にプレイしているように見せなくてはいけなくて、お芝居中のテンションやスピード感がちょっとでもズレると観る人に違和感を与えてしまうんですよね。

なので、1人を撮っているときは、ほかの2人はカメラに映らない場所でお芝居をするというやり方をしていました。単純に同じシーンを3回ずつ撮るので、対面でお芝居する機会は少なかったけれど会っている時間は意外と多くて。こういった特殊な撮影は貴重なので、おもしろかったです。

――お2人とはどんなお話をされたのでしょうか。

【奥平大兼】ゲームの話もしましたけど、小倉さんと央士くんがK-POPアイドルの話で盛り上がっていたので、それを横で「へー」って言いながら聞いていたら、いつの間にかいろいろなグループの名前を覚えていました(笑)。

――お2人の推しグループの動画を観たり?

【奥平大兼】現場では休憩中にロケットリーグと2人が好きなK-POPアイドルの動画ばかり観ていたので、おかげで僕もK-POPにハマりました(笑)。中でも好きなのはaespaで、2人はNewJeansを推していましたね。普段から音楽はよく聞くのですが、今まで触れてこなかったK-POPの曲のよさを今回発見できてよかったです。

――ちなみに練習や撮影以外で3人でゲームをすることはありましたか?

【奥平大兼】僕と央士くんはしょっちゅうゲームをしていました。実は昨日も一緒にゲームをやっていたんです。小倉さんはあまりゲームをやらないと言っていたけれど、今度会ったら誘ってみようかな。

――本作では友達ではなかった3人がチームを組み、同じ目標に向かって絆を深めていく姿が描かれています。奥平さんがこれまでに“チームの絆”を感じたエピソードがあれば教えていただけますか。

【奥平大兼】昨年「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」というドラマに出演したのですが、撮影中にチームの絆がどんどん深まっていくのを実感しました。キャスト、スタッフさん、監督、プロデューサーさんなどチーム全員が本気で取り組んでいて熱量がすごかったんですよね。

シリアスなシーンも多くて張り詰めた空気の時もあったのですが、それも含めて楽しかったというか。みんなでひとつの作品を丁寧に作っている感覚があって、絆や一体感を感じられる素敵な現場でした。クラスメイトを演じたキャストのみんなとは今も仲良しで、たまに遊んだりしています。

■奥平大兼が語る「今も大事にしている恩師の言葉」
――昨年は「ヴレッジ」、「君は放課後インソムニア」など映画4本、ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」、配信ドラマ「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」の主演など大活躍でしたが、振り返ってみてどんな1年でしたか?

【奥平大兼】昨年は役で学生服を着る機会が多かった印象があります。学生役は今しかできないので、できればもっとチャレンジしたくて。あと、本当にいろいろな経験ができたので、お芝居に対する考え方が変わった年でもありました。

――お芝居のやり方にも変化があったのでしょうか?

【奥平大兼】そこは全く変わってないと思います。僕の俳優デビュー作「MOTHER マザー」を撮った大森立嗣監督の言葉を大事にしているので、お芝居に対する考え方は変わっても、お芝居のやり方は変えたくないと思っているんです。

――大森監督からはどんな言葉を頂いたのでしょうか?

【奥平大兼】「1番はお芝居を楽しむこと」という監督の言葉が僕の中で強烈に印象に残っていて、どんなに難しいシーンでも楽しめる自分でありたいと思っています。あと、「セリフを喋りたくなかったら黙っていてもいいから、言いたくなったタイミングで喋りなさい」という言葉も印象的でした。

この2つ以外にも大森監督はいろいろなことを教えてくださったので、それは俳優をやっていくうえで、今後もずっと大事にしていきたいと思っています。

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:伊藤省吾(sitor)
◆ヘアメイク:速水昭仁 (CHUUNi)

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