風邪を引いたあと咳が長引き、治るどころかひどくなっていく。それは実は、「チック」の症状だった。Instagramで育児や創作漫画を描いているねこじまいもみ(@neko_jima_imomi)さんが自身の体験を描いた漫画「それがチックとわかるまで」を紹介する。ねこじまさんにも漫画を描いたきっかけや、子育てで心掛けていることなどを聞いた。

■風邪のあと、いつまでも続く咳。レントゲンを撮っても異常はなく原因がわからない…
ねこじまさんの長女・わっちちゃんは5歳のころ、風邪の熱が下がったあとも咳が続いていた。もともと咳が長引くことは多かったが、今回は薬を飲んでもよくならず、夜に何度も目を覚ましたり、止まらない咳に泣き出してしまったりするほどに。喉に何かがある感覚がするようで、咳払いも増えていた。しかし、レントゲンを撮っても異常はない。ねこじまさんは別の病院でも診察を受けてみることにする。

■育児はいつも予想外。同じような状況の人の参考になれば
チック症とは自分の意思とは関係なく体が動いてしまったり、声が出てしまったりする疾患のことで、咳払いもその症状の一つ。名前は聞いたことがあるけれど、詳しくはわからないという人も多いのではないだろうか。ねこじまさんに今回の漫画を描こうと思ったきっかけについて聞いてみた。

「私にとってチックのことはとても印象深く、今でもよく思い出す出来事なのでずっと描きたいと思っていました。育児はいつも予想外で『こんなことあるの!?』ということが本当にたくさん起こります。 その一例として、いつか同じような状況になった方の参考になればと思い、描くことにしました」

ねこじまさんも「チック」という言葉は知っていたが、具体的な知識はなく、咳の症状とは結び付かなかったそう。咳がチックとわかるまではどれくらいかかったのだろうか。また、わかった当時の心境についても聞いた。

「症状が出てから3カ月ほどだったと思います。お薬手帳を見直して振り返っていたのですが、当時はもっと長く感じていました。医師からチックと言われたときは予想もしていなかったので『え?これがチック!?』と心の中は若干パニックで、『治るのだろうか…』とすぐに心配したのを覚えています」

わっちちゃんがチック症になった当時、ねこじまさんは仕事が忙しく、旦那さんとも別居中だったそう。そんな家庭の雰囲気を感じ取っていた部分もあったのかもしれない。当時の経験から、子育てについて心掛けていることがあるという。

「長女はとても気を遣うタイプで、特に小さいころは、本当の気持ちを飲み込んで我慢してしまうことがたくさんありました。しかし、私は知らず知らずのうちにその部分に甘えて行動することがあった気がします。改めて、子どもの言葉ではなく気持ちに目を向けることを考えさせられました。チックの原因が私たち夫婦の不仲だったかは断定できませんが、家庭の雰囲気がいかに子どもの心に影響するのかを身をもって感じました。今は家族と楽しく過ごすこと、子どもとたくさん話しコミュニケーションを大切にすること、そして子どもの気持ちに想像力を持って接することを心掛けています」

■「こういう症状があると知らなかった」「同じ症状で悩んでいた」漫画へは読者からのコメントが殺到
漫画には「咳とチックが結びつかない」「たまたま読んだこの投稿に衝撃を受けた」など、コメントが数多く寄せられている。誰かの参考になればという思いで描き始めたねこじまさんだが、読者の声からは驚いたことがあったそうだ。

「描き始めたときは、この出来事は珍しいことだと思っていました。でも描いていくうちに同じような方が多くいることに一番驚きました。『まさに今、咳チックです』『同じようにいろんな病院に行きチックへたどり着いた』など、予想もしていなかった反響でした。喉に何かある感じはヒステリー球だと医師に言われたというコメントもいくつかあり、もしかしたらそうだったのかもしれないと今になって思うこともあります。 みなさんのコメントにたくさん励まされ、すごく勉強になりました」

その後わっちちゃんのチックは治まり、現在は11歳になっているという。育児について発信を続けるねこじまさんに、今後の展望と読者へのメッセージを貰った。

「育児エッセイ漫画は、繊細な長女と自閉スペクトラム症の長男の話を主に描いています。小さいころのことや成長して変わってきたことなど、読んだ方が前向きになれるような話をたくさん描きたいと思っています。また、実話を基にした創作漫画も連載中で、現在いろんな話が描けるように修行中です!これからもたくさんの方に読んでいただけるお話を描いていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします!」

悩みながらも、まっすぐ子どもたちと向き合うねこじまさんが描く漫画を、これからも楽しみにしたい。

取材・文=松原明子