健康で長生きする体を作るためには適切な食事をする必要があります。「90歳を越えても元気で好きなことのできるシニアになってほしい」と願う医師がたどりついた、長生きのための食事術を紹介します。

テレビ静岡で5月26日に放送された「テレビ寺子屋」では、医師で作家の鎌田實さんが健康と長生きのための食事術について語りました。

医師・鎌田實さん:
ここ数年、佐賀県で「鎌田塾」を開催し健康・長生きのための習慣を幅広く提案しています。その真ん中にあるのが「食事」です。

軸となる「きん・こつ・けつ・のう・ちょう(筋肉・骨・血管・脳・腸)」に良い食事は何だろうと考えた「鎌田式長生き食事術」についてお話しします。

減塩 血管の負担を減らす

大体どの県でも1日あたり2gほど塩分摂取量が多いです。多くの人は塩分の摂取量が多くなるほど、高血圧になります。血管に負荷がかかり動脈硬化が起き、何が待っているかというと脳卒中、脳血管性の認知症などに関係してきます。

それから心筋梗塞も心臓の冠動脈の硬化で起きますから、高血圧と密接に関係します。塩分摂取をまずは1g減らしましょう。

野菜を350g 老化を遅らせる

厚生労働省は、1日に350gの野菜を取ることを推奨しています。その理由の一つが、「抗酸化力」を持つ野菜を食べ、自分の細胞の抗酸化に役立てようという作戦です。

野菜が自らの鮮度を守ろうと持っているのが抗酸化力で、野菜を多く食べると、老化をゆっくりにしてくれる。慢性炎症を防いでくれます。

慢性炎症は急性炎症と違い、気づかないうちに動脈硬化が起き、うつ病や認知症にも関係しているのではないかと最近言われています。

そして、体の免疫細胞のうち7割ぐらいが存在すると言われている腸内の環境を整えておくのにも野菜はとても大事です。

ごちそうみそ汁 筋肉を守る

65歳を越えたら「タンパク質」を取ることが大切です。具だくさんな野菜みそ汁の上に、ベーコンや豚こまなどを入れた「ごちそうみそ汁」は、これだけでも十分な栄養を摂れます。

90歳の壁を越え元気に生きられたときに、日帰り温泉に行けるかどうか、たまにはレストランにカツ丼やラーメンを食べに行けるかどうか、最後はお金よりも筋肉がなくなって行けなくなります。

筋肉を守り続けるためには、日本の高齢者はタンパク質をしっかり取る習慣を身につけたいです。

「あさはきた にぎやかだ」シニアのための合言葉

「まごわやさしい」(豆・ごま・わかめ・野菜・魚・しいたけ・芋)は、日本の健康の合言葉ですが、シニアはそれではダメだと思うようになったのです。

本当にいいものばかりですが、これだけを合言葉に長くやっていると、虚弱になり、腰が曲がってヨボヨボしてきます。

そこで、シニアの合言葉は「あさはきたにぎやかだ」と言っています。

「あ」は油、オメガ3などいい油は積極的に摂りましょう。「さ」は魚、「は」発酵したもの、納豆などですね。「き」はキノコ、「た」卵、「に」は肉、「ぎ」牛乳、「や」野菜、「か」海藻、「だ」大豆、大豆がまたいいんです。お菓子を食べる時に患者さんにオススメしているのは、タンパク質が多い豆やナッツです。

あ 油
さ 魚
は 発酵食品
き キノコ
た 卵
に 肉
ぎ 牛乳
や 野菜
か 海藻
だ 大豆

塩の摂取量を減らし、野菜をしっかり摂り、タンパク質も摂り、そして体を動かして筋肉を活性化させることによって、90歳を越してもピンピン元気で好きなことがやれるシニアになっていただきたいと思います。

鎌田實:1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。「がんばらない」「大・大往生」など著書多数。

※この記事は5月26日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。