フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのトニー・バーバーが3月5日付け同紙に‘Post-Soviet neighbours navigate the orbit of Russian power’(ソ連崩壊後の隣国がロシアの軌道を航行している)と題する論説を書き、ウクライナ戦争の行方がベラルーシ、モルドバ、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアに重くのしかかっている様子を描写している。要旨は次のとおり。

(ロイター/アフロ)

 1991年のソ連崩壊後、クレムリンは新たに独立した旧ソ連諸国との西側および南側国境を最重視する政策を取ってきた。この傾向は、2000年にプーチンが政権について以降、一層明白になった。その手法は、分離主義運動を支援するとともに、エネルギー、貿易、投資で隣国のロシアへの依存を確実にすることを柱とする。

 ベラルーシ、モルドバ、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアにとり、ウクライナでの戦闘は将来に重くのしかかっている。現状、ロシアの影響力が強く残る国もあれば、弱まった国もある。

 ロシア支配の最も顕著な例はベラルーシだ。ウクライナ戦争は同国をロシアに一層近づけた。とはいえ、ロシアは今のところ、ベラルーシを完全にロシアに統合する企てやウクライナ戦争に完全に組み込むような態度を見せていない。そうした動きは、ルカシェンコの独裁体制を不安定化させる要因になり得るからだ。

 モルドバでは対照的に、ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアの影響力は低下した。これに対し2月、ロシアが支援する分離地域であるトランスニストリアの指導部が緊急議会を開催し、ロシアに庇護を求めるようなアピールを出した。

 背景には、モルドバが初めて同地域の再統一化に本格的に乗り出した(昨年、モルドバ議会は、「分離主義」を刑事犯罪に指定し、モルドバ政府はトランスニストリア企業に対する税関管理を強化)ことがある。