著名人の名前や写真を広告に使用し、投資などに勧誘する「なりすまし詐欺」が問題となっている。なりすまされた著名人のひとりであるZOZOの創業者の前澤友作氏は、米国の弁護士と連携して米国のMeta社を告訴するとしている。

Meta社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「なりすまし広告」に何を思うのか(ロイター/アフロ)

 Meta社に対して前澤氏は、「自分のなりすまし広告が出続けているので、なりすまし広告を削除して欲しい」と申し出たが、Meta社は「AIを使用して広告を審査するなど、なりすまし広告をなくす努力をしているが、全部は無くせないので理解して欲しい」というばかりだという。

SNS上には、著名人に”なりすました”広告が飛び交っている(前澤友作氏のX上のポストより)

 Meta社の日本法人はFacebook Japan合同会社(旧Facebook Japan株式会社)だが、日本法人を訴えるのではなく、親会社の米国のMeta社を訴えるというのがいかにも前澤さんらしい。日本法人を訴えて、仮に勝訴してもその賠償額は米国のそれと比較して微々たるものだろう。営利企業が反省するとして、最も効果的な懲罰はやはり金銭的な制裁だからだろうか。

 前沢氏よりも先に著名人の名を借りて投資勧誘する詐欺広告へ十分な対応を取らなかったとして米国Meta社を訴えた例がある。2023年3月にオーストラリア競争消費者委員会(ACCC: Australian Competition & Consumer Commission)がオーストラリア消費者法(ACL)またはオーストラリア証券投資委員会法(ASICL)に違反しているとして、Meta Platforms, IncとMeta Platforms Ireland Limitedに対して連邦裁判所に訴えを起こしている。この種の訴訟は世界初だといわれている。

  Facebookが偽のメディア記事に誘導するリンクを掲載し、実業家のディック・スミス(Dick Smith)やテレビ司会者のデイビット・コッホ(David Koch)、元ニューサウスウェールズ州首相マイク・ベアード(Mike Baird)らオーストラリアの著名人になりすました詐欺広告で暗号通貨の儲け話を信じ込ませ、資金を振り込ませたというのがACCCの主張である。

 ACCCのロッド・シムズ(Rod Sims)議長は「訴訟の本質は、Meta社が自社のプラットフォーム上で公開するこれらの広告に責任があるということだ」と述べるとともに「Meta社のテクノロジーによってこれらの広告に関与する可能性が高いユーザーに絞り込むことができる」とターゲティング広告の手法で被害を助長している点も指摘している。