山形市は本年度、蔵王の樹氷が見頃の時期に起きる“ロープウエー待ち渋滞”の解消に向け、対策に乗り出す。観光客の集中によるオーバーツーリズム(観光公害)の抑止を目的とした観光庁の事業を活用し、関係団体と協議会を立ち上げて予約制の導入などを視野に計画を策定する。市のインバウンド(訪日客)は新型コロナウイルス禍前の水準を上回っており、観光の満足度を一層高める考え。

 冬季の蔵王は、樹氷や雪を目当てに訪れる外国人観光客で混雑する。蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅では、待ち時間が2時間以上となり、地元のスキーヤーやスノーボーダーが蔵王から離れてしまうオーバーツーリズムが懸念されている。観光庁のモデル地域に選定された市は、8千万円を上限に経費の3分の2を補助する事業スキームを活用し、今冬から具体的な対策に取り組む。

 近く発足させる協議会は、企業や観光団体などで構成。ロープウエーの予約制をはじめ、混雑具合の効果的な情報発信、需要と供給に応じて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」の導入なども検討課題とする見通しだ。

 市観光戦略課によると、2023年度に市を訪れた外国人観光客は17万2388人で、コロナ禍前の19年度(4万8651人)の約3.5倍。月別では2月が最多で2万6958人。

 蔵王については、コロナ禍後を見据えた先行投資として、国の補助事業を活用した宿泊施設の高付加価値化改修などが行われてきた。20〜23年度で総事業費は約35億円に及ぶ。こうした魅力アップの取り組みを継続する考えで、市は「協議会として具体策を取りまとめる。グリーン期も含めてインバウンドを推進し、蔵王の満足度を上げる」としている。