山形市七日町2丁目の「水の町屋七日町御殿堰」で営業する老舗の岩渕茶舗(岩淵正太郎社長)が、上山市で菓子店を経営する「山から」の高橋寛光社長(42)に日本茶販売や喫茶店など事業譲渡することが9日、両社への取材で分かった。高橋社長は山形市の古民家を改装し、店舗を構え、新たな日本茶の楽しみ方を提案する方針。閉店後のテナントには入居を検討する事業者があるという。

 高橋社長は、事業を引き継ぐため、新たな会社「SHUKAN(シュカン)」を4月下旬に設立、山形市長谷堂の古民家を改装し、今年9月に新店舗「お茶(ちゃ)と菓(か)で 岩淵」をオープンさせる予定。現在の岩渕茶舗は、山形花笠まつりや盆が過ぎた8月中旬に閉店し、会社を清算する予定。岩淵社長(70)は当面新店舗で一緒に働き、事業を継承する。後継者がおらず、「インターネットの普及で、商売のやり方が変わった。引き継いでくれる若い世代に今後を任せたい」と語る。

 岩渕茶舗は1880(明治13)年創業で、岩淵社長は4代目。日本茶の販売のほか、併設の「茶呑み処いわぶち」ではお茶を使ったソフトクリームや甘味などを提供している。岩淵社長は2006年に、御殿堰や周辺の施設整備を手がける七日町御殿堰開発に参画し、飲食店などが入る水の町屋の開発に関わった。七日町商店街振興組合の理事長も務める。中心市街地を代表するイベントになったドリンクテーリングや、スプリングフェスティバルでの働く車の展示を企画し、にぎわい創出に貢献してきた。

 昨年4月、岩淵社長が県事業承継・引継ぎ支援センターや山形商工会議所に今後について相談。金融機関と連携し、きらやかコンサルティング&パートナーズが高橋社長に仲介した。山からは、抹茶を使った菓子も製造しており、話を聞いた高橋社長が老舗の歴史を存続させようと、事業を引き継ぐことを決めた。

 今年4月中旬に事業譲渡契約を結んだ。高橋社長は「岩淵社長に出してもらった冷たい緑茶がとてもおいしかった。お茶の文化を若い世代に継承していきたい」と話す。後継テナントについて、七日町御殿堰開発の結城康三社長は「御殿堰と調和するまちづくりについて理解してくれる方と、引き続き協力したい」としている。