来春の小学校入学に向けたランドセル商戦が本格化している。人気商品を求めて商戦が早まっており、高額化も進んでいる。少子化で販売数が伸び悩む中、各メーカーはオーダーメイド対応や高機能化などで差別化を図り、需要を取り込みたい考えだ。

色とりどりの

 紺や紫、薄緑にオレンジ――。ゴールデンウィーク3日目の29日、「ララちゃんランドセル」で知られる埼玉県川口市のメーカー「羅羅屋ららや」のショールームには、約30色のランドセルが並び、多くの家族連れが品定めをしていた。

 長女(5)と訪れた同市の女性会社員(40)は「自分が小学生だった頃と比べて色の種類が多く、形もおしゃれでうらやましい。6年間使うものなので、子どもが納得いくものを選びたい」と話した。

 羅羅屋では、オーダーメイドに力を入れている。本体が19色あり、フタの形10種類、ポケットの形6種類、糸の色12種類などを組み合わせると、100億通り以上から選べる。スマートフォンなどで完成イメージを確認できるのも売りだ。

5月販売が最多

 各メーカーなどによると、20年ほど前の売り上げのピークは入学直前の1〜2月頃だった。だが、近年は入学前年の5月の販売数が最も多い。人気商品が売り切れないうちに手に入れようとする消費者心理が、商戦前倒しを加速させる要因になっている。

 3月にさいたま市大宮区で展示会を開いた、大手メーカー池田屋(静岡市)の長岡和久社長は「黒と赤の2色の時代ではない。子どもの希望に合う色や柄を増やしてきた」とする。SNSなどで情報を得た両親が、「子どもが好きな色の在庫がなくなる」と、購入を急ぐケースもあるという。

 少子化を背景に、価格も高額化している。祖父母や両親が、1人の子どもにより多くのお金をかける傾向があるためだ。平均価格は約5万9000円で、一部には20万円を超える高級ブランドの商品もある。

独自の工夫

 「顧客との距離が近い小規模店の強みを生かしている」と語るのは、独自の商品を販売する林カバン店(埼玉県坂戸市)の林俊行社長だ。

 同店の商品は、体と触れる背中部分に強度のある本革を使用。肩ひもの側面や背中の持ち手部分には反射材を付けている。底の金具をずらして肩ひもを外側に広げられるようにし、上着の上から背負っても窮屈さがないように工夫を凝らす。

 一方、エルゴランセル(川口市)では、登山用リュックの機能をつけた商品を開発した。学習用端末や大型の教科書などで小学生の荷物は重くなっており、胸と腰にベルトを付けることで、肩だけに負担がかからないように配慮した。内部のゴムバンドで教科書などを固定することもできる。使いやすさがSNSで評判となり、売り上げは上々という。平田海介代表社員は「子どもの体への負担を心配する親も多い。そうした声に応える商品を作り続けたい」としている。