富士山の山梨県側で山開きを迎え、夏山のシーズンとなりました。同県が混雑緩和のため5合目にゲートを設置し、登山者数の上限を1日4000人に制限するほど、富士山は多くの人を魅了し続けています。読売新聞朝刊の投書欄「気流」には、富士山に関する投書が数多く寄せられてきました。記者の心に刺さった投書を紹介する「ササる投書」、今回のテーマは「富士山」です。(※投稿者の年齢や職業などは掲載当時。紙面では実名で掲載)

定年退職の記念に登山、「見下ろした」花火

 富士登山のときに見下ろした花火が忘れられない。

 60歳の定年退職を迎え、何か記念をと、友人と富士山に登ることにした。8月上旬の夕方、山梨県から登り始めた。暗くなり、ふと下界に目を向けると、街の明かりから浮き出るように花火の輪が出ては消え、また輪が出ては消えていた。

 さらに、雲がかかっている所では、稲光がピカッ、ピカッと光っていた。普段は見上げている光景が眼下に広がり感動した。頂上にも無事に到着し、素晴らしいご来光も拝むことができた。良き記念になった。(72歳・無職=兵庫県、2017年7月30日掲載)

太宰小説に誘われ、格別の眺め

 ドラマや映画のロケ地を訪ねる旅がはやっている。ドラマではないが、太宰治の小説「富嶽百景」が頭に浮かび、夫を誘い富士山を見に行くことにした。

 当初は気乗りしていなかった夫だが、車で山道を走り、視界が開けたところで見えた富士山は格別だったようで、景色に見とれていた。私も、富士山との距離感が絶妙で素晴らしい眺めだと思った。何十年も前に読んだことがあったが後日、本を購入して再読してみると、富士山の様々な描写があった。またいつか、本を手に訪れたい。(60歳・主婦=長野県、2016年11月23日掲載)

どこからでも見え、毎朝「おはよう」

 私が住んでいる地域では、どこからでも富士山が見えます。「今日の富士山、きれいだったね」が、家族や友人とのあいさつ代わりです。梅雨で天気が悪く、見えない日が続くと、寂しくなります。隣町などに行って、富士山が見えないと、方向が分からなくなってしまいます。

 毎朝、富士山に「おはよう」とあいさつをしながら、ランニングをしています。ほぼ毎日、スマートフォン(高機能携帯電話)で撮影しています。富士山は、私にとって心の古里です。(55歳・アルバイト=静岡県、2013年6月30日掲載)

担当記者から

 学生の頃、ネパールでヒマラヤ山脈を眺めたことがあります。雄大な姿に感動しましたが、富士山の方が美しいと思ったのは日本人だからでしょうか。富士の名を冠した地名が各地にあるように、富士山は特別だと感じています。いつまでも美しい姿を見せ続けてほしいです。(田渕)

 「ササる投書」を毎週掲載します。次回もお楽しみに!