再び輝けるか

 サンフランシスコジャイアンツを退団した筒香嘉智(32)が古巣・横浜DeNAベイスターズに復帰した。3年契約で、年俸は最初の2年が3億円ずつで、3年目は変動制だという。日本では205本のホームランを打った長距離砲だが、アメリカでは5年間で18本。マイナー生活の方が長かった。「速い球に対応ができていない」といった評価もされていたが、日本復帰で再び輝けるか。

 ここでは、MLBから日本に戻ってきた打者の日本での成績を比較し、今後の筒香の展望について考えてみたい。メジャーに行く時は24歳だった大谷翔平のように発展途上の段階で行くのではなく、20代後半〜30代前半のピークを迎えたあたりの選手が多いため、多少成績が落ちるのは仕方がないという前提に立つ。日本での、メジャーでの、そして帰国後の最高のシーズンをそれぞれ1年ずつ振り返る。数字は打率・本塁打・打点・盗塁だ。名前の後の年齢は復帰した年の12月31日時点の年齢。復帰年齢が若い順に並べてみた。

復帰年齢は29歳から36歳まで

【西岡剛】29歳
.346 11 59 22(ロッテ・2010年・26歳)
.226 0 19 2(ツインズ・2011年・27歳)
.290 4 44 11(阪神・2013年・29歳)

【福留孝介】31歳
.351 31 104 11(中日・2006年・29歳)
.263 13 44 7(カブス・2010年・33歳)
.281 20 76 1(阪神・2015年・38歳)

【岩村明憲】32歳
.300 44 103 8(ヤクルト・2004年・24歳)
.274 6 48 8(レイズ・2008年・29歳)
.246 3 17 0(ヤクルト・2013年・34歳)

【新庄剛志】32歳
.278 28 85 15(阪神・2000年・28歳)
.268 10 56 4(メッツ・2001年・29歳)
.298 24 79 1(日ハム・2004年・32歳)

【秋山翔吾】33歳
.359 14 55 17(西武・2015年・27歳)
.245 0 9 7(レッズ・2020年・32歳)
.274 4 38 8(広島・2023年・34歳)

【中村紀洋】34歳
.320 46 132 3(近鉄・2001年)
.128 0 3 0(ドジャース・2005年)
.293 20 79 2(中日・2007年)

【城島健司】34歳
.330 34 119 9(ダイエー・2003年・27歳)
.291 18 76 3(マリナーズ・2006年・30歳)
.303 28 91 9(阪神・2010・34歳)

【井口資仁】35歳
.340 27 109 42(ダイエー・2003年)
.281 18 67 11(ホワイトソックス・2006年)
.297 23 83 4(ロッテ・2013年)

【青木宣親】36歳
.358 14 63 19(ヤクルト・2010年・28歳)
.288 10 50 30(ブリュワーズ・2012年・30歳)
.327 10 67 3(ヤクルト・2018年・36歳)

【松井稼頭央】36歳
.332 36 87 33(西武・2002年・27歳)
.288 4 37 32(ロッキーズ・2007年・32歳)
.291 8 46 9(楽天・2014年・39歳)

 29歳から36歳での復帰という結果になったが、今年33歳になる筒香は秋山翔吾と同じ復帰年齢である。では、ここで同じ数字を筒香で見てみよう。

良い方向に外れてほしい

【筒香嘉智】33歳
.322 44 110 0(横浜・2016年・25歳)
.268 8 25 0(ジャース&パイレーツ・2021年・30歳)

 完全に憶測と過去の例からの推測ではないが、筒香はどれぐらいの成績を残せるか。日本での最高成績は岩村の.300 44 103 8や、松井の.332 36 87 33、中村の.320 46 132 3に匹敵するといえようか。となれば、復帰後は.246 3 17 0(岩村)、.291 8 46 9(松井)、.293  20  79  02(中村)は行けるか? あとは選手としてのタイプは違うものの、同じ「33歳」ということを考えると秋山の.274 4 38 8という数字も参考になるかもしれない。

 現状、多くの野球ファンは以下の3点を指摘する。【1】NPBの投手のレベルは筒香がいた5年前より格段に上がっている【2】筒香は150km/h以上の速球を苦手としている【3】NPBの投手は平気で150km/hの球を投げる。だからこそ、筒香の今季の成績に対しては懐疑的だ。しかも、ここ4シーズンの多くをマイナーで過ごし、一線級の投手とはあまり対戦していない。一軍合流が遅れるため、出場試合数も限られる。

 上記10人の先達の日本復帰後の成績を見ると、9人がかつてのベストシーズンの成績から落としている。城島は少なくとも復帰1年目、青木は復帰後コンスタントに立派な成績を残したが、7人は往年の活躍を知っているファンからすれば若干物足りない数字だ。そう考えると、筒香は勝手な予測だが、打率.258、本塁打17本、打点は53としておく。良い方に完全に外れて欲しい。

 それにしても新庄という選手はやはり「宇宙人」である。阪神時代のベスト成績を上回る成績を日ハムで挙げてしまうのだから……。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部