今季からリーグに準加盟する佐賀インドネシアドリームズ、13日に開幕戦

 野球が発展途上の東南、西アジア出身選手を中心とする異色のチーム「佐賀インドネシアドリームズ」が13日に、独立リーグ「ヤマエグループ九州アジアリーグ」の開幕戦に臨む。外国人主体のチームが9月までの半年間を日本でプレーするのは異例のこと。スポーツの力で地方を元気にし、経済成長が著しいアジア諸国と連携を深める新しいビジネスモデルの側面を持つ。Full-Countではこの新しいプロジェクトを4回に渡り、連載する。1回目は想像を上回る選手の成長について。(聞き手・楢崎 豊、間 淳)

 今季から九州アジアリーグに加わる佐賀インドネシアドリームズには、24人の選手が所属している。出身地は日本の他、インドネシア、スリランカ、シンガポール、フィリピンの計5か国と国際色豊か。中には、国の代表に選ばれている選手もいる。同チームは佐賀の武雄市と嬉野市を本拠地とし、野球の普及が目的で、各国の交流も行っていく。

 国が違えば、野球を始める経緯も異なる。例えば、スリランカは軍隊と野球連盟が横並びのため、代表選手は軍隊に所属しているという。軍隊に入ってから本格的にプレーする選手もいる。日本のように社会人やプロのチームはなく、専門知識のある指導者もいない。かつてロッテに所属し、佐賀インドネシアドリームズを率いる香月良仁監督は「選手のレベルは日本の独立リーグのトップレベルには達していません。日本で野球をしてきた人から見ると、投げ方や打ち方に違和感があると思います」と話す。

元ロッテ・香月良仁監督と福原佑二代表も驚いた選手の成長スピード

 技術的には日本の選手ほど高くない。東南アジアは野球に関する情報も少ないため、チームの選手たちは日本に来てからツーシームやカットボールといった手元で小さく動く変化球を初めて知ったという。

 実は昨夏、香月監督と福原佑二代表には焦りが生まれていた。インドネシアでチームに加入予定の選手の動きを確認すると「このレベルで大丈夫なのか。いくら育成に重点を置くチームとはいえ、最低限のプレーができないと九州アジアリーグ側に申し訳ない」と不安があった。

 ところが、福原代表が「スポンジのように吸収していく」と話すように、選手たちは急成長している。インドネシア時代を知る関係者は「一体、何があったんだ。インドネシアにいた頃は見たことのないプレーをしている」と驚くほどだ。

 選手たちは香月監督をはじめとする指導者の話に素直に耳を傾け、失敗を恐れない。根底にあるのは、野球ができる喜び。香月監督は「とにかく楽しそうに野球をしています。上手くなりたい気持ちが強くてストイックで、高校野球のように元気です。投げ方や打ち方に悩んでいる子どもたち、野球の原点を忘れてしまいそうな独立リーグの選手たち、色んなカテゴリーの人たちに彼らのプレーを見てほしいです」と語った。

 九州独立リーグには、NPBのドラフトで指名されるレベルの選手もいる。いくら選手の成長スピードが速いと言っても、佐賀インドネシアドリームズが簡単に勝てるほど甘くはない。香月監督も「チームの戦力を整えて、地元で認知してもらうには10年かかると思っています」と理解している。

「球団としてはスポンサー、出資、事業と3つの柱で収益構造を確立してから、チームの力を上げていく方針です。まずは試合結果ではなく、選手のキャラクターやエンターテインメント性の高いイベントなどで応援してもらえるチームづくりを進めていきたいと思っています」

 野球の知識や技術は他のチームより劣るかもしれない。チームのミーティングは日本語が分かるインドネシア人がインドネシア語に訳し、インドネシア語が分かるスリランカ人がスリランカ語に訳すといった伝言ゲームのようで、通常の3倍の時間がかかる苦労もある。それでも、香月監督は「語学力が鍛えられますし、他のチームにない特徴が魅力になると思っています」と前向きに捉えている。

 シーズン開幕は4月13日で、今季は24試合の公式戦を予定している。東南アジア出身選手中心のチームは、どんな野球を見せるのか。シーズン序盤と終盤で選手はどれだけ成長するのか。観客は勝敗を超えた楽しみや将来性を感じるはずだ。(間淳 / Jun Aida)