—今までラガーマンとして苦労したことは
昌隆:けがですね。僕の場合は、大きい脳しんとうを2回ほど起こして救急車で運ばれたことがあるんです。1回目はすごく落ち込みました。具体的にどう立ち直っていけばいいのかわからず、ただ何もしないでボーッと家にいるだけ。自分ではどうにもできなかった。でも、チームメイトが気に掛けて、声を掛け続けてくれたおかげでやる気を取り戻せた。

自分自身で乗り越えたなって思ったのが2回目。メンタルトレーニングの先生にも教えていただいたことなんですけど、“自分の置かれた状況はすべて意味があること”と思うようにしたんです。マイナスにとらえないで「けがをしたからこの次がある」って前向きに考えて、トレーニングもそのときにやれることをやり続ける。それを毎日続けたことでモチベーションもパフォーマンスも上がって、復帰することができました。

さっき知憲も言ってましたけど、自分のことは自分が一番わかってるので、“自分を信じてポジティブに考えること”が一番大事。自分に起こったことに意味づけをして、長い人生のただの半年間、その期間をどう過ごすことが大事か。それは、けがしたこと、挫折したことからの学びでした。脳しんとうがなかったら、今の自分はないと思えるまでになりました。

知憲:僕も、ポジティブ思考はすごく大事だと思ってます。結局、けがをしたときは体も苦しいけど、心も苦しいんですよね。以前は試合に出られなかったり、けがをしてしまったりしたときに「自分はこのチームに必要ないんじゃないか」とネガティブになることが多かったんです。

でもネガティブ思考だと脳が動かなくなって、それと連動して体の反応も鈍くなる。その状態で練習をしても思うように動けないので悪循環なんですよね。ここ2年くらいでメンタルトレーニングをしていくうちにやっと思考が変わってきて、“ほかの誰かと比べずに自分にフォーカスする”、“前の自分を超えればいい”。毎日それだけを考えてトレーニングして、ポジティブに過ごす。“自分は毎日成長している”と自信を持つことを心掛けて練習していたら、パフォーマンスが上がりました。

—つらいとき、お互いの存在も支えか
知憲:それはすごくありますね。
昌隆:肉体的にも、精神的にも大きいです。けがで動けないときは送り迎えをしたり、買い物に行くのを手伝ったり。
知憲:「こんなに優しかったっけ!」って思うときがあったよ(笑)。
昌隆:普通にするでしょ! 精神的な部分だと、「やるしかないんだから、前向いてやろうぜ」っていう声掛けもしたりします。

知憲:昌隆が脳しんとうを起こした後はメンタルがやばかったね。メールでもネガティブな言葉しか返ってこなかった。でも愚痴というか、自分のマイナスな面をぶつけられる存在がいるっていうのも精神的にはラクだよね。
昌隆:そうだね。調子が悪いときってネガティブになりやすいから。ポジティブ思考の人がまわりにいると影響されるから、お互いがポジティブ思考も補えるといいね。