「椅子の美術館」埼玉県立近代美術館

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2017 写真:木奥恵三 ©️MIYANAGA Aiko Courtesy of Mizuma Art Gallery 「宮永愛子:漕法」展示風景(高松市美術館、2019)

現代の日常生活にとって、欠かすことのできない存在ともいえる椅子。職場でのデスクワークではその機能性が重視され、食卓やリビングではインテリアとして見た目を重視する方も少なくないのではないでしょうか。私たちにとってこの上なく身近な存在である椅子は、デザイナー、建築家だけにとどまらず、アーティストにとっても魅力的なモチーフとなってきました。

埼玉県立近代美術館は建築家・黒川紀章設計の美術館であり、様々な年代に幅広く楽しんでもらえるワークショップや、ユニークな展示を開催。美術館の周囲には彫刻広場があり、黒川紀章の代表作である『中銀カプセルタワービル・住宅カプセル』や彫刻作品が展示されています。

また、「椅子の美術館」とも呼ばれ、常時数種類のグッド・デザインの椅子が展示されています。展示されている椅子はただ鑑賞するだけではなく、「今日座れる椅子」として座ることができます。※展示室内の椅子に座るためには、展覧会観覧料が必要です。

【埼玉県立近代美術館の椅子コレクション】

(埼玉県立近代美術館 YouTubeチャンネル)

現代アートにおける「椅子」のテーマ

クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)《肘掛け椅子》2012 国立民族学博物館

椅子というモチーフを一つとっても、ただ人間が座るためだけの単純なものではありません。権威の象徴となる玉座や、身体の一部として人間を補助する車椅子、さらに死や暴力との直接的なつながりと無縁ではない電気椅子など、社会や身体との関わりの中で多様な意味や象徴性をまとっています。

アーティストたちは、究極の日用品ともいえる椅子の持つ意味を各々でとらえ、作品を通じて様々な形で表現してきました。アートの中の椅子は、必ずしも座るためのものではなく、「休息」や「日常」といった感覚から逸脱し、極端なあり方によって私たちの思考に揺さぶりをかけるのです。

「椅子の美術館」だからこそ開催できる展覧会

石田尚志《椅子とスクリーン》2002

本展では、開館当初よりデザイン椅子の収集、館内の設置をしてきた埼玉県立近代美術館が、従来のデザイン椅子展とは異なる視点から「椅子」というテーマに挑みます。展覧会タイトルの「アブソリュート・チェアーズ」には「アブソリュート=絶対的・究極的」という言葉の意味から導かれる「椅子の絶対的な魅力の源泉とは?」「アートにおける椅子の究極とは?」といった問いが出発点となっています。

主に戦後から現代までの美術作品における椅子の表現に着目して、平面・立体・映像作品が約70点集結。フランシス・ベーコン、マルセル・デュシャン、草間彌生、岡本太郎、アンディ・ウォーホル、宮永愛子など、アート界を牽引してきた国内外の作家28組が出品され、椅子という未知なるモチーフに挑みます。

開催情報

展覧会名 アブソリュート・チェアーズ
会期   2024 年2 月17 日(土)− 2024 年5 月12 日(日)
休館日  月曜日(4 月29 日、5 月6 日は開館)
開館時間 10:00〜17:30(展示室への入場は17:00 まで)
観覧料  一般1300 円(1040 円) 大高生1040 円(830 円)
     ・( )内は20 名以上の団体料金
     ・中学生以下と障害者手帳をご提示の方(付き添い1 名を含む)は無料です。
     ・企画展観覧券(ぐるっとパスを除く)をお持ちの方は、
     あわせてMOMASコレクション(1階展示室)もご覧いただけます。
出品点数 約70 点(予定)