石岡瑛子とは?

石岡瑛子 ©Kazumi Kurigami 1983

広告をはじめ、舞台美術、衣装デザインなど多岐にわたる分野で世界的に活躍したデザイナー・石岡瑛子。東京藝術大学を卒業した石岡瑛子は資生堂宣伝部に就職し、デザイナーとしてのキャリアをスタートします。

当時の広告で主流だった美人のイメージを覆す、健康的で意志的な女性像を打ち出し、新しい価値観を提示しました。

「西洋は東洋を着こなせるか」PARCO ポスター (1979)

1970年にフリーランスとなった瑛子は、1973年に渋谷パルコが開業するとメインのキャンペーンを総括。鮮烈なメッセージとともに型破りな表現を展開し、「石岡瑛子といえばパルコ」「パルコといえば石岡瑛子」と語られ、一世を風靡しました。

フリーランスになって以降、瑛子が力を入れていた領域がブックデザインです。表紙やカバーだけではなく、紙質やサイズ、文字組みなどはもちろん、時に企画、内容にまで関わりました。

瑛子のこだわりが詰まった究極のブックデザインが自身の作品集『Eiko by Eiko』。同書はジャズの帝王マイルス・デイヴィスやスティーブ・ジョブズなど多くのアーティストや経営者の心をつかみました。

「ドラキュラ」映画ポスター (1992)

瑛子は1970年代以降のエンターテインメント分野におけるグラフィック・デザインの仕事でも数々の功績を残しています。

美術監督として関わった映画「MISHIMA」(1985)ではカンヌ国際映画祭芸術貢献賞、マイルス・デイヴィスのアルバム「TUTU」(1986)ではグラミー賞最優秀レコーディング・パッケージ賞、映画「ドラキュラ」(1992)では衣装デザインでアカデミー賞を受賞しました。

本展では瑛子の1960-80年代の仕事を中心に、 アートディレクターとして采配を振るったポスターやCM、グラフィックアートからスケッチまで、約500点を5幕に分けてご覧いただきます。

「石岡瑛子 I デザイン」の見どころをご紹介します。

見どころ1 時代に投げ込まれる起爆剤、社会を揺さぶるメッセージ

「鶯は誰にも媚びずホーホケキョ」PARCO ポスター (1976)

デザインによって人々に新しい生き方や価値観を提示した瑛子。「太陽に愛されよう 資生堂ビューティケイク」(1966)では、 当時高校生だった前田美波里を起用して、生命力溢れる意志的な女性像を打ち出しました。

PARCOの一連のキャンペーンでは、性や国境、人種の枠組みを打破すべく、「鶯は誰にも媚びずホーホケキョ」「諸君、女のためにもっと美しくなろう」などの鮮烈なメッセージとともに型破りな表現を展開し、センセーションを巻き起こしました。

見どころ2 誰もが敬意を抱いた情熱と執念――妥協を知らない完璧主義者

「女性よ、テレビを消しなさい 女性よ、週刊誌を閉じなさい」角川書店ポスター(1975)

細部に至るまで完璧な仕上がりを求めた瑛子は、仕事のクオリティを上げるために協働するクリエイターやスタッフと対話を重ね、時には軋轢も辞さず激しく議論を戦わせました。几帳面だった瑛子が残したスケッチやメモ、校正紙などから、彼女の体温や生の感情を感じ取るとともに、制作のプロセスの一端をうかがい知ることができます。

特に写真の色校正にびっしりと書き込まれた朱字(修正指示)は必見です。瑛子の直筆の朱字の入った校正紙は、展示するたびに、細かく厳しい指示に恐れおののく人、あるいは情熱と説得力に満ちた書き込みに感動する人が続出し、SNSでも話題をさらっています。

見どころ3 綺羅星のような表現者たちとの出会い、コラボレーション

マイルス・デイヴィス 「TUTU」レコードジャケット (1986)

瑛子にとって他者とのコラボレーションは、優れた才能と出会い、刺激し合うことによって新しい化学反応を起こし、ひとりではなし得ない表現に至る魔法のようなものでした。 ファッション写真界の巨匠アーヴィング・ペンや名匠フランシス・フォード・コッポラとコラボレーションした作品は栄誉ある賞を受賞しています。

ダンサー、女優、映画監督として活躍したレニ・リーフェンシュタールとの長きにわたるコラボレーションも特筆されます。1972年にレニの写真集を目にして衝撃を受けた瑛子は、後に彼女を取材し、展覧会を企画するに至ります

本展では、瑛子がその創造力や人生について検証を重ね、「20世紀を代表する映像の巨 人」と評したレニにまつわるプロジェクトを、インタビュー、展覧会の構成・演出等の資料、印刷物のデザイン、関連書籍などとともに紹介します。

刺激的で、見る者を鼓舞しインスパイアする石岡瑛子の世界。会場で是非、その圧倒的な熱量を“体感”してください。

展覧会情報

会期 2024年4月27日(土)〜2024年7月7日(日)
会場 茨城県近代美術館
住所 310-0851 茨城県水戸市千波町東久保666-1
休館日 月曜日、5月7日(火) ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館
※GW中(4月29日[月・祝] 〜5月6日[月・振休])は無休
入場料 一般 1,000(870)円/満70歳以上 500(430)円/高大生 730(610)円/小中生 370(240)円
※( )内は20名以上の団体料金 ※土曜日は高校生以下無料 ※障害者手帳・指定難病特定医療費受給者証等をご持参の方は無料 ※4月27日(土)は満70歳以上の方は入場無料
TEL 029-243-5111
URL 【茨城県近代美術館 公式サイト】