春になると聞こえてくるウグイスの鳴き声、「ホーホケキョ」。あのさえずりは、最初からちゃんと鳴けるわけではなく練習を重ねて上達していくらしく、はじめは何だかちょっとおかしな鳴き方をするのだそう。

 そんな噂を聞きつけた私は、「下手くそなさえずりを聴いてみたい」と森の中に入ることにしました。

 しかし、聴こえてくるのは「ホーホケキョ、ホーホケキョ、ホーホケキョ」というきれいなさえずりばかりで、下手くそな鳴き声は聴こえてきません。

「もしかして、下手くそすぎてウグイスの鳴き声だとわからないのかも?」と思い、日本野鳥の会ひょうごの方に問い合わせてみることに。

 聞いたところによると、今の時期、兵庫県南部だともうすっかり上手くなっているのだとか。

 さらに、「ホーホケキョ」以外に、「ケキョ」の部分だけを連発して「ケキョ! ケキョ! ケキョ!」と鳴く『谷渡り』と、「チャッ! チャッ! チャッ!」と鳴く『地鳴き』があるそうで、それらの鳴き方だとウグイスだと気づかない人も多いのだと教えてくれました。

 もうすっかり上達しているということがわかったので、「下手くそな鳴き声はまた来年や」と気持ちを切り替えて、『谷渡り』『地鳴き』を聴いてみようとほかの森に行ってきました。

 森に入ってしばらくするとウグイスの鳴き声が聴こえてきたのですが、何だか様子がおかしい……?

「ホホホーホケキョ」という「ホ」が多い鳴き声や、「ホーピチャ↓ ピチャ↓」と音程がおかしい鳴き声。さらには、「ケキョ! ケキョ! ケキョ!」を連発するはずの『谷渡り』も、「ケキョキョ、ケキョキョ、ケ、、キョ」とあからさまにリズムが悪いんです。

「やった! ウグイスの下手くそな鳴き声が聴けた!」と喜んだものの……。この時期には上達していると聞いていたのに、一体なぜなのか? そんなことを考えていたところに、野鳥観察をしている方が偶然通りかかったので「なんかウグイスの鳴き方、変ですよね」と尋ねてみました。

 すると返ってきたのは、「せやねん。このあたりのウグイス、みんな鳴き方が下手くそやねん」という驚きの言葉。

「え〜っ、一体どういうことなの!?」

 なんでも、成長過程にあるウグイスは、親鳥や、周辺にいるほかのウグイスの鳴き方を真似て育つ特性があるそう。もともとこの周辺にはあまり鳴き方が上手くないウグイスがいて、それを手本にして育ったウグイスを、また別のウグイスが真似て……。

「そんなことが繰り返されてきたため.このあたりのウグイスは『これが正しい鳴き方だ』と、思い込むんやろうなあ。このあたりのウグイスは、ずっとこんな鳴き方してるわあ」と、説明してくれました。

 そのあとも引き続き聴いていても、ずっと何か変な鳴き方をしていました(笑)。

 正しく鳴くウグイス先生、この場所に来て、正しい鳴き方を教えたって!

※ラジオ関西『バズろぅ!』2024年4月27日放送回より

(『バズろぅ!』ラジオパーソライター・わきたかし)