兵庫県相生市長選が告示された12日午前に立候補を届け出た元兵庫県議の小西彦治氏(52)は、同日午後、一転して立候補を取り下げた。県外の首長選に立候補するためといい、「応援してくれた市民に申し訳ない」と釈明。同市長選は6回連続で無投票となり、有権者からは選択の機会が失われたことを残念がる声が聞かれた。

 小西氏は同日午前8時半ごろ、同市選挙管理委員会に立候補の届け出書類を提出。同市役所前で第一声を上げた。7期目を目指す現職の多選を批判し、「未来を作るために、子どもや働き盛りの世代に財源を投資するべき」と訴え、市内の掲示板にポスターを張るなどの選挙活動を始めた。

 しかし、同日午後5時前に突如、立候補辞退の届け出書類を市選管に提出。職員らが対応に追われた。小西氏は報道陣に対し、「昔から世話になっている支援者と相談して決めた。『期待している』と応援してくれた市民もいたので申し訳ない」と頭を下げた。

 立候補を取り下げた理由について小西氏は「急きょ、今秋までに実施される県外の市長選に出馬することになった」と説明。相生市長選に当選した場合、その選挙に出られなくなるため取り下げを決めたという。

 市選管によると、一度受理された立候補の届け出は、告示日の午後5時までに辞退の手続きをすれば、取り下げは可能。ただし供託金(政令市を除く市長選100万円)は返還されない。市選管の担当者は「辞退はデータとして残らないことが多いので正確には分からないが、知ってる限りでは前代未聞」と驚く。

 同市長選では、現職の谷口氏が初当選した2000年以来、無投票が続いており、24年ぶりの選挙戦を期待する市民も少なくなかった。同市本郷町の嘱託社員(60)は「掲示板に候補者のポスターが2枚張り出されていて、久しぶりに投票できると思ったのに」と肩を落とす。「そもそも市外からしか立候補を表明する人が出なかったことが課題」と嘆くのは同市古池の会社員(24)。「市の進める子育て施策を評価しているが、子どもの数は減っている。継続して取り組んでほしい」と要望した。(西竹唯太朗、喜田美咲)