優生保護法(1948〜96年)下に障害者らに行われた強制不妊手術を巡る公文書を非開示としたのは、情報公開条例に反するとして、京都新聞社が滋賀県に開示を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(長谷川浩二裁判長)は9日、一審大津地裁判決に続いて、手術の根拠となったとみられる生活歴や病歴などの開示を命じた。一審同様、県が黒塗りにした8割近くの情報を開示すべきとした。
 
 昨年3月の一審判決は、同社が手術対象者の名前や住所の開示を求めていない点から、対象者の行動傾向や症状、治療経過、手術に関与した病院名や手術内容を開示すべきと判断。原告弁護団によると強制不妊手術の公文書開示を認めた全国初の判決で、県が黒塗りにした347カ所中225カ所の開示と61カ所の部分開示を命じた。異性関係や遺伝情報、職業などの開示は認めなかった。

 長谷川裁判長は、一審判決をほぼ支持し、開示数は同じで対象を一部変更した。手術対象者の病歴や手術内容などについては「秘匿性が高いとはいえない」と指摘し、プライバシー情報で権利侵害の恐れがあるとする県の主張を退けた。

 非行歴や家族の財産といった情報も一部を除いて、個人が識別されるとは言いがたいなどとして、一審同様に開示対象とした。

 一方で、異性関係や遺伝情報などは「人格に密接に関連し、秘匿性が高い」として非開示を維持。職業も、販売物や職場での立場など具体的な記載があることから、個人の特定につながるとして非開示とした。

 訴訟を巡っては、京都新聞社が2017年、強制不妊手術の適否を決める県優生保護審査会に提出された文書を情報公開請求。県は1968〜77年ごろに作成された文書について大半を非開示とした。県の第三者機関は非開示部分のほぼ全てにあたる449カ所を開示するよう県に答申したが、県はうち347カ所を再び非開示とし、同社が2020年に提訴した。

 同社と県の双方が大津地裁判決を不服として控訴していた。

 県の三日月大造知事は「主張が認められなかった部分について、判決文を精査して対応を検討する」とコメントした。
 

 京都新聞社の目黒重幸編集局長のコメント 大阪高裁が、一審に引き続き滋賀県に対し多くの項目で開示を命じたことは、旧優生保護法下で行われた公権力による人権侵害の実態を解明する上で大きな成果と受け止めています。今後の対応については、判決内容をよく検討した上で判断します。