今の自分に満足している人は、この先は読まないでください。
夢を叶えたい、何者かになりたいと切実に思っている人だけ、読んでください!

実業家・住谷杏奈さんの生き方から学ぶ、不確かな時代をサバイブするためのヒントを紹介する連載。
>>>前回の記事:今すぐ飛び込む勇気、ありますか?│住谷杏奈
今回は、「好きを仕事にする」という風潮にメスを入れます。

 
自称ではなく、誰からも認められてこそ肩書がついてくる

 初めて芸能プロダクションに入った10代そこそこの頃、事務所の社長との面談がありました。「芸能界での目標は?」と聞かれたときに、「金スマの後ろに座っている赤い衣装を着ている人みたいな仕事をしたいです」と答えました。社長は無言になり、ポカーンとした顔で私を見ていました。普通は、CMに出たいとか女優になって月9に出たいとか言うらしいのですが、私は叶いそうにない大きな夢を恥ずかしげもなく他人に話すことが滑稽に思えて仕方がない、かわいげのない子どもだったので、現実的に可能そうなことしか夢として人に語れなかったのです。
 CMやドラマにメインで出られるほどの容姿を持ち合わせていないことは自分でわかっていましたし、グラビアで天下を取れるほどの体も持ち合わせていないこともわかっていました。特に意識していたというわけではないのですが、その頃から、常に自分のことを俯瞰で見る術は無意識下で身についていたのかなと思います。

 10代の頃の私は、他人の目を気にする系女子だったので、自称タレント女になってしまったら陰で大笑いされる!と、本気で思い込んでいました。だから、自称タレント女にだけはならないぞ!と強く思っていたのです。
 ちなみに、自称タレント女とは……夜の街で、テレビや雑誌で見たこともないのに、メンズに「何してる子なの?」ときかれたら「モデルです!」とか「芸能やってます!」とか自信満々に、言ったもん勝ちの肩書きで自己紹介する人のことです(笑)。肩書きは、相手が決めるもの!!! 見て気づかれなかったら、芸能人でも何でもありません。例えば、広瀬すずちゃんやみちょぱに職業をきく人はいないですよね?
 “そうはならない“という意識が強く出てしまい、事務所の社長にまでポカーンとした顔をさせてしまったのです。

 あの当時は、反面教師になる人がたくさんいたなぁ。今思い返すと、そこまで他人にどう思われるかなんて気にしなくてよかったし、そこまで他人は私のことなんて気にも留めていなかったと思うし、他人の目を気にしすぎて自分を出せずにいました。他人にどう思われるかなんて、本当に気にしなくてよかったのにね。
 当時はコンプレックスのかたまりで、自分に自信がなくて。自信がないから周りの声もすごく気になっていたし、人付き合いにも頭を悩ませていました。自信がないと負の感情ばかり出てきて、いいことなんてないんですよね。負のループです。
 もちろん実績もなかったので、胸を張って自己アピールできることは何ひとつありませんでした。だから、10代の頃の芸能活動は、とても中途半端に終わってしまったのかもしれません。

 そんな私が生まれ変わるきっかけとなったのは、結婚でした。前にもお話ししましたが、それまでがすべて不幸な恋愛だったから、今までと180度違うタイプの人と付き合わないと自分が幸せになれないと20歳で気がつき、追いたい派だった私が追われまくっていた人と付き合おうと決め、8カ月の交際を経て、結婚しないと今すぐ別れる!!と脅し(笑)、めでたく結婚したのです。このとき、まだ23歳でした。
 そこで不幸だった人生をリセットできたんですよね。

 なんの実績もなかった私には、肩書きがありませんでした。
 それが、専業主婦という肩書きをもらえたことがすごく嬉しかった。何をしている人かをきかれたら、胸を張って言える肩書きを手に入れたからです。人生で初めて自信を持てたことが、専業主婦になれたことだったのです。



目標をひとつクリアするごとに武器が増える

 よく、どうしたら努力を継続できるんですか?ときかれることがあるけれど、私は同じことをずーっと続けているわけじゃないんですよ。仕事って、いい意味でゲームみたいなもので、ひとつの目標をクリアしたら環境や見える景色が少しずつ変わっていくから、同じことを続けている感覚はないんですよね。進んでいくたびにノウハウや自信という武器が増えて、新しい自分になっている。そこに新しい手法、技術、時代にあった考え方が備わり、さらにバージョンアップしていくんですよ。
 例えば、会社で毎日が同じような仕事の繰り返しと感じているなら、それは、あなた自身の中に目標がないのかもしれません。ひとつ仕事を終えるたびに、「よっしゃー!!! 〇〇が身についた!!」という気づきもないのかもしれません。同じことの繰り返しのようでも、次はこうやったらもっと速くできるかもしれない、もっとこうしたらよりいい結果が出せるのかもしれない、という工夫が足りないのかもしれませんよ。

 少し話は違うかもしれませんが、私が商品プロデュースを始めた頃も、日々試行錯誤の連続でした。当初は、世の中にないものを作るぞ!!!と意気込んでいたのですが、いろいろと経験を重ねていくと、今市場にあるものを自分のアイデアでよりよく変えて販売する方が売れるということに気がつきました。というか、そのやり方が私には合っていた、ということですね。
 自分で経験して、ちょっとした失敗をしたり、ちょっとした成功を納めたりと、人から聞いた話ではなく、自分でやってみて、自分の目で確かめて、自分の感覚で軌道修正していくことが大事だということを知ったのです。

 成功者の失敗談を聞いて、これは間違っている手法なのだからやめておこう、とかいう思考の方がよくいますが、それはもったいないです。その成功者は、そのやり方ではうまくいかなかったかもしれませんが、あなたがやれば成功することだってあるし、その逆もあります。成功者がこうやってうまくいったんだということをやっても、あなたがやったら失敗するかもしれないのです。
 人は、それぞれ持っているものが違います。生まれ持った能力もそうだし、感覚もそう。育った環境だって違う。だから、成功する方法も当たり前に違うんです。これはこうだからと決めつけて間口を狭めずに、たくさんの方法でチャレンジする。やっていくうちに絶対に自分にいい方法が見つかるはずです。

 間口を狭めることでチャンスも狭めてしまうことは極力避け、間口はガバガバに広げていきましょう!!


自分を俯瞰で見て、何ができるかを明確にすること

「好きなことを仕事にしたい」という人は多いですが、私は無理に好きなことを仕事にしなくてもいいと思っています。それよりも、「自分に向いている仕事は何か」を探すことの方がずっと大事です。
 私は、必ずしも起業して経営者になれとか独立して成功しよう!とかいうことをすすめているわけではありません。例えば、誰かをサポートする力に優れていて、2番手ポジションの方が力を発揮できる人も多くいるでしょう。
 まずは自分を俯瞰で見て、何が向いているのかを知る作業から始めてみましょう。好きではないけれど得意なこと、稼げることがあるはずです。例えば転職の採用面接などでも、「何でもできます!」と言うよりは、自分に何ができるかを明確にすることです。できることで力を伸ばして実績を出し、自信を持って次のステージへ進むのです。

 だからこそ、やる前から何かと言い訳をして何にもチャレンジをしないことは、とてももったいないことなのです。



PROFILE
住谷杏奈(すみたに・あんな)
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1983年2月1日生まれ。2006年にお笑いタレント・レイザーラモンHGさんと結婚し、2008年に男児、2011年に女児を出産。夫のケガを機に商品開発をはじめ、実業家としての才能も開花。美容の知識を活かしたプロデュース商品で次々とヒットを生み出す。現在は、実業家、タレントとして活動。