2023年にG7男女共同参画・女性活躍担当大臣の会合が栃木県日光市で行われるなど、「女性活躍」の機運が高まっています。今年4月、消防士の中でも救助に関する専門的な知識と技術、体力が求められる県内で唯一の「高度救助隊」に女性として初めて抜擢された消防隊員に密着しました。

 人命救助について専門的で高度な教育を受けた隊員で編成される、消防の「高度救助隊」。2017年に那須町で発生した雪崩事故や、2021年に静岡県熱海市で発生した土砂災害などで救助に当たり、時には県域を超えて活動します。

 県内では宇都宮市中央消防署だけに配置され、その中でも16人のみが抜擢されるという救助のエキスパート。知識、技術、体力すべてが求められる「高度救助隊」に県内で初めての女性隊員が誕生しました。青木真奈美さん27歳です。

(青木真奈美さん)
「体力的には女性で大変な部分があるが、要救助者からしたら性別関係なく助けてくれる人を求めていると思う。助けられる隊員になるために努力は続けています。」

 今月、高度救助隊に配属されたばかりの青木さんの素顔に迫ります。

 高度救助隊の勤務は、朝8時30分から次の日の朝の24時間体制。16人のうち8人で1つの班を組んでいます。

 この日は、交通事故や山岳事故などを想定した救助訓練が行われました。

 1秒でも早く救助しようと隊員が声を出し合いながら1つ1つ現場の状況を把握していきます。

 その日の隊員の構成によって、担当するポジションが変わるといいますが、青木さんはこの日「空気式救助マット」というおよそ50トンまで持ち上げられるマットの操作にあたりました。

 ほかの隊員と連携を図りながら車両を持ち上げ、無事、救出することができました。いつ、何が起きてもすばやく対応できるようにと、訓練は常に本番さながらです。

 この日は出動が無く、正午すぎ同僚とテーブルを囲んで昼食です。

(同僚)「それは取材用の昼食?彩りがいい」

(青木真奈美さん)「取材用のビビンバです」

青木さんは保育園の避難訓練で、初めて見た消防士と消防車のカッコよさに惹かれ、夢に向かって一直線。19歳で晴れて宇都宮市消防局の消防士になりました。

(青木真奈美さん)
「とりあえず消防士になる!みたいな。人を助ける仕事をしたいと思っていたので。母が看護師をしていて、人を助ける職業が身近にあったのもあり目指すようになりました。」

 そして青木さんは、消防隊員として火災現場や交通事故の現場に出動を重ねていく中で、人命救助の最前線で高度救助隊が活躍している姿を見て、徐々に憧れるようになったといいます。

(青木真奈美さん)
「理想と現実のギャップは結構あった。技術も知識もない状態で、自分の力不足を感じた。できないことがたくさんある分、伸びしろがあるのかと思って頑張っている」

 青木さんは、ほかにも女性初を成し遂げています。
2022年10月には県消防学校の専科教育「救助科」に入校し、女性で初めての修了者にもなりました。そして毎年、全国の消防隊員が救助技術を競う大会には、代表して「ロープブリッジ救出」という競技に宇都宮市の女性消防隊員として初出場を果たしました。

(青木真奈美さん)
「自信をつけられるように、トレーニングジムに行っている。努力次第で技術をつけられるので、強みにしていきたい」

 青木さんと切磋琢磨して救助の技術を磨いてきた同期の男性は、青木さんをこう表現します。

(青木さんの同期 長山公紀さん)
「一言で言うと、全力女子。去年一緒に勤務していた時に一緒に懸垂をしたり夜も訓練をしていたが、諦めない。人として尊敬しています」


 青木さんの今後の目標は?

(青木真奈美さん)
「私の周りの隊員はすごい方たちばかりなので、皆さんに追いつけるようにしていきたい。消防士になった頃からの目標が「多くの人の命を助けて、誰かのために努力を続けること」。少しでも近付けられるように日々業務に努めていきたい」

 高度救助隊のトレードマーク・赤い色のロープが付いたワッペンを左腕に、きょうも訓練に励みます。

 青木さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。