今年に入ってマスコミや調査機関などから上場企業の業績予想の集計が発表されています。それらの多くでは、今年から来年にかけて、主要な企業の利益を集計すると連続して過去最高を更新すると見込まれています。株価は業績に先行して変動します。利益が過去最高を更新するなら、日経平均株価も再び史上最高値を更新していくトレンドと考えるのが自然でしょう。

その一方、私たちが生活するなかで「景気がそれほど良くなったと感じられない」と考える方も多いでしょう。足元の株価が歴史的な高値水準と言われてもピンと来ないかもしれません。そこで、企業業績や経済の実態が、なぜ私たちの景気に関する実感と違っているのかを解説しましょう。

「景気が良い」と実感できるのはどんなとき?

私たちにとって景気が良いと実感できるのは、私たちの収入が増えたときでしょう。政府が公表する経済指標で、いくら景気が良いと言われたところで、実際に私たちがもらう給料が増えてきて、例えば、これまでよりわずかでもお値段が高いものを買うようになったり、普段は行けないちょっと贅沢な旅行に行けるようになったりしなければ、ひとごとに感じてしまいます。

日本労働組合総連合会(連合)が4月4日に発表した春季生活闘争(春闘)では、2024年の賃上げ率は5.24%(4月2日時点)となりました。1991年(5.66%)以来の上昇です。春闘とは、労働組合が月給などについて企業側に要求して、交渉、そして決定することです。春闘で決まる賃上げ率でその年の賃金が決まってくるわけです。

下図の棒グラフは毎年の賃上げ率の推移です。これに対して、日経平均株価は毎年の年末値となっています(2024年は年末になっていないため、直近の値で表示)。このような賃上げ率と株価の連動から見て、今年の株高の背景には賃上げがあることがわかります。