プーチン大統領は9日、首都モスクワで行われた第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念パレードで演説を行い、ウクライナ侵攻を巡り対立する西側諸国に対して、「ナチ継承者の正当化などは西側エリートの共通政策だ。ロシアは全面的衝突を防ぐためあらゆる努力を尽くし、私たちを脅す者は誰も許さない。我々の戦略的な力(核部隊)は常に戦闘状態にある」と警告した。プーチン演説に先立って、キャメロン英外相は2日、英国が供与した兵器で、ウクライナがロシア領内を攻撃することについて、「ウクライナ人がどのような行動を取るかについて、私たちの見解では、支援した兵器をどのように使うかは彼らの判断であり、私たちは、注意事項は何もつけません」と述べ、記者から「ロシア領内への使用も含めて」か、と問われると「それはウクライナが決めることだ。そして、ウクライナにはその権利がある」と答えていた。

ロシアのウクライナ侵攻に対して、スナク英首相は4月23日、「ロシアの残忍な野心からウクライナを守ることは、我々の安全保障と全欧州にとって不可欠だ。もし、プーチン氏に、この侵略戦争に成功することを許せば、彼はポーランド国境に留まることはないだろう」と述べた。また、マクロン仏大統領は、2日の英エコノミスト誌の取材に対して、「もし、ロシアがウクライナで勝てば、欧州の安全保障はなくなる。ロシアがそこで立ち止まると誰が考えるだろうか。他の近隣諸国、モルドバ、ルーマニア、ポーランド、リトアニアなどには、どのような安全があるのか」と危惧をあらわにした。さらに、マクロン仏大統領は2日、英誌「エコノミスト」のインタビューに応じ、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの地上部隊派遣の可能性にあらためて言及し、「もし、ロシア軍が前線を突破し、ウクライナの要求があったとしたら、当然ながら(地上軍派遣を)検討しなければならない」と強調した。ウクライナへの地上部隊の派遣を巡り、マクロン大統領は今年2月にも、「地上部隊の派遣について、公式に了解され承認される形での合意はなかった。その動きについては、何も排除するべきではない。ロシアがこの戦争に勝てないよう、我々はあらゆることをする」と述べていた。

プーチン大統領は6日、ウクライナと国境を接する地域を管轄する南部軍管区のミサイル部隊などに対して、戦術核の使用を想定した演習の実施を指示した。2022年2月のウクライナ侵攻以来、西側諸国に対して戦術核兵器使用を示唆してきたが、公式に演習を発表したのは今回が初めて。また、ベラルーシもロシアの演習と合わせて行うと発表した。ロシア外務省は声明で、演習は西側による挑発的な言動への対応だとして、ウクライナへの「F16」戦闘機供与や派兵は「壊滅的な結果」を招くなどと主張している。

★ゲスト:秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所日本特別代表)、小泉悠(東大先端研准教授)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)