大型連休・後半の4連休が始まり、3日は行楽地やふるさとに帰省する人で東海道・山陽新幹線は混雑のピークを迎えます。ただ、4月27〜29日の連休前半では、「みどりの窓口」に長蛇の列ができたというSNS上の投稿が相次ぎました。背景にあるのは、JR各社の窓口が次々に廃止され、残った主要駅の窓口に殺到していることが一因として挙げられています。なぜ窓口の廃止が相次いでいるのでしょうか。

■「窓口行ったら長蛇の列」 全国各地の『みどりの窓口』続々廃止で大混雑

読売テレビニュース

「仕事終わってJRのみどりの窓口に1時間ちょっと並んでいます」

「チケット間違えてみどりの窓口行ったら長蛇の列。GW恐るべし」

「外国人グループが駅員と窓口2つのうち一つをずーーっと占拠して当分終わりそうにないし」

 連休前半の4月27〜29日やその直前、SNS上では、「みどりの窓口」の長蛇の列にため息を漏らす投稿が次々にアップされました。

 混雑の大きな要因になっているのが、JR各社によるみどりの窓口の相次ぐ廃止です。

 JR西日本は2019年2月、京阪神エリアの約180駅にあったみどりの窓口を縮小すると発表。2024年4月時点で約100駅となり、2030年度までに約30駅にまで減らされる予定です。さらに、コロナ禍となった2020年12月、北陸・中国地方を含めた営業エリア全域でも、窓口の数を大幅に縮小すると発表しました。

 関西に限らず、JR東日本は3年前、2025年までにみどりの窓口の設置駅を約3分の1の140駅程度にすると発表するなど、窓口の廃止は全国で進んでいます。

■窓口廃止の背景に国鉄時代の職員大量退職…コロナ禍直撃で「固定費低減」

窓口の代わりに導入が進む「みどりの券売機プラス」(JR西日本のHPより)

 JR各社は窓口を縮小した理由について、ICカードの普及やネット予約をする人が増えたことによる、窓口需要の減少を挙げていました。

 ただ、JRにとっては、国鉄時代に採用された職員が大量に退職する時期と重なったことも大きな要因です。各部門で人手不足への対応が喫緊の課題となり、コロナ禍で利用客が減少したことも重なったため、JRは窓口業務を集約化し、その代わりにオペレーターが電話応対する券売機「みどりの券売機プラス」の導入を進める方針に舵を切ったのです。

 新型コロナの影響による時差出勤などの呼びかけが行われる中、JR西日本は2020年の発表当時、「アフターコロナでもお客様のご利用は元通りには戻らないと考えており、鉄道オペレーションの生産性向上・スリム化による固定費低減が必要」と説明していました。

■外国人観光客が急増!格安の周遊切符「ジャパン・レール・パス」は主要駅の窓口受け取り

外国人観光客向け切符「ジャパン・レール・パス」HPより

 ところが、水際対策が緩和され、新型コロナの分類が5類に移行すると、激減していた外国人観光客が爆発的に急増します。

 多くの外国人観光客が日本各地への観光で利用するのがJR6社が共同で運用する「ジャパン・レール・パス」です。短期滞在の外国人観光客向けの切符で、期間は7日・14日・21日の3種類、座席はグリーンと普通の2種類があります。料金は、大人で7日間の普通座席の場合は5万円、21日間の場合は10万円。この切符を持っていれば、期間中は何度でも新幹線や在来線の特急を乗ることができ、各地を周遊する観光客にとっては非常にオトクな切符なのです。

 ジャパン・レール・パスは入国する前にインターネット上で購入手続きをとることはできますが、実際に切符を受け取るにはパスポートの確認のため、指定された主要駅のみどりの窓口などに行く必要があります。さらに、新幹線や特急の指定席などは券売機や専用サイトで予約をできるものの、コミュニケーションに不安を感じる外国人観光客も多く、窓口で購入するケースが多いのが現状です。

 この結果、みどりの窓口が主要駅に集約化されたことと重なり、主要駅の窓口は、連休に限らず、各地で大混雑が起きているのです。

■JR西日本社長「操作できる人は券売機やWEBで」 窓口縮小の動きは変わらず

JR西日本・長谷川一明社長の会見(4月30日)

 こうした事態に対しJR西日本の長谷川一明社長は4月30日の会見で、「間接部門などから経験者を配置して窓口の確保に努めてはいるが、結果的に長時間お待たせする場合もあり申し訳ないのですが、私どもとしても機械を操作できるお客さんには案内をするなど、きめ細かく対応したい」と語りました。

 JR西日本は、窓口の業務の人員を増員するなどの対応をとっているほか、ネット予約サービスや窓口の代わりに設置された「みどりの券売機プラス」の利用を呼び掛けています。「みどりの券売機プラス」では、切符の行き先・日時の変更や払い戻しのほか、学割定期の購入などにも対応しています。

 ただ、高齢者などを中心にWEB上での購入や券売機の遠隔での手続きに不安を感じる利用客も多くいるのが実情です。いまのところ、JR各社に窓口縮小の方針を撤回する動きはなく、今後もみどりの窓口を利用する場合は、時間に余裕をもって訪れる必要がありそうです。

新大阪駅(3日午前9時ごろ)
新大阪駅(3日午前9時ごろ)
新大阪駅(3日午前9時ごろ)
新大阪駅(3日午前9時ごろ)
新大阪駅(3日午前9時ごろ)
名神高速彦根IC付近(3日午前9時ごろ)