停滞、現状維持という言葉が、まるで似合わないベテランだ。今年で50歳になった人気声優・森久保祥太郎。声優活動も30年近くになり、今なお多数の作品に出演しながら、芸能事務所の社長でもある。もともとは役者志望ながら、何にでも挑戦するその行動力こそが、今の森久保を支えるもの。「今日、暇だなあって思う人生は1日もない。自信を持っています」と堂々と語れる人は、どの業界を探してもそう簡単には見つからない。

【映像】「暇な人生は1日もない」と語る森久保祥太郎

 小学生の頃、英語演劇をきっかけに俳優に興味を持ち劇団入り。「下北沢とか新宿の小劇場を賑わせれば、俳優として食っていけるんじゃないか」と、先輩の誘いもあり劇団員としての日々を送っていたが、声優事務所シグマ・セブンから「声の仕事をする役者を探している」と声をかけられた。「その時はナレーションや声優は、自分の人生に一切関わってこないものだと思っていた」理由は、自分の声にコンプレックスを持っていたから。「自分の声、あんまり好きじゃなかったんですよ」。ただ、ここで森久保の行動力がコンプレックスを上回る。とにかく芝居ができることを優先しオーディションを受けたところ「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」への出演が決まり、声優業の扉を開いた。

 ここから次々と声優としての仕事が決まり、気がつけば順風満帆。ただ、ふと30歳になったころ、気付いたことがあった。「30歳ぐらいの時にピンチというか、新規のオーディションをほとんど受けていなかった」ため、出演作はシリーズものばかりで、新規の仕事がゼロに。移り変わりの早い業界で、新たなものがないのは致命的。「これ、ヤバいなって。声優人生が終わっちゃうかもと焦った」という。

 ここから声優としてのテクニックや知識を増すことに向かわなかったのが森久保らしいところ。「声優としてより、森久保として何かデカくなんなきゃ成長しない」と、人間・森久保祥太郎を鍛え直すことにした。声優仕事がない時には舞台に上がったり、バンドをやってみたり。いろいろな人と出会うと、いつしかラジオの仕事が週10本以上にまで増えた。「声優と全く違う仕事の経験がデカいですね。今また声優が表に出て、バラエティーをさせてもらう時代になったわけじゃないですか。今思うと、自分につながっていてラッキー」と、がむしゃらに動いたことが、結果として声優・森久保をより魅力的にした。

 50歳にして、物事への意欲は増すばかりだ。「とにかく待っていないで、攻める。今日、暇だなあって思う人生は1日もないです。何かしらの扉が開くことにつながっている」と、走れる限り走る。これだけ走る森久保であれば、自分の周りには、可能性の扉がいくらでも待っている。
(SHIBUYA ANIME BASEより)