東京商工会議所が今年の新入社員研修の受講者、およそ1000人に調査を行った。

【映像】新入社員が求める理想の上司ランキング 歴史上の人物は意外なあの人?

 その結果、「就職先の会社でいつまで働きたいですか?」という問いに対し、「チャンスがあれば転職」が26.4%と「定年まで」(21.1%)の割合を18年ぶりに上回った。

 「定年まで」と答えた新入社員は、過去10年で最も低い数値となり、2014年度と比較して14.0ポイントの減少に。そんな新入社員たちは、どんな職場環境を求めているのだろうか?

 理想の上司は「仕事の指導を丁寧に行う」「明確な理念や考えを持っている」「人間関係、チームワークを重視する」人物であり、そのイメージに近い人物として、スポーツ界では大谷翔平選手が2年連続1位となった。

 さらに、組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT株式会社が、今年の新入社員4000人あまりを対象に実施した「新入社員意識調査」では「キャリア形成支援について会社に期待すること」として2014年の調査以降、過去最高となったのが「上司に相談をできる機会をつくってほしい」(56.0%)だった。

 コロナ禍以降、リモートワークも多くなった中で、「相談の機会」は貴重に感じられるのだろうか?

 そして、もう1つ過去最高となったのが「定時に帰りたい」。この定時帰宅志向は、コロナ禍の2020年を除いて年々増加し続けており、2014年と比べて20.8ポイント増となっている。

 相談の機会は欲しいけど、定時に帰りたい。仕事終わりの飲みニケーションでは、新入社員の希望は満たせないようだ。

 新入社員の転職意欲の高まりについて、Trusted CEOでグローバルなビジネスコラボレーションを促進している、連続起業家のファリザ・アビドヴァ氏は「起業を支援している立場から見ると、政府が様々なファンドを用意し、規制も緩和されている中、非常に良いトレンド」としながらも、課題を指摘する。

 「最近は本当に起業しやすい環境になったが、人の採用にはまだ課題がある。スタートアップは急成長するので、チームもスピーディーに大きくする必要があるが日本ではまだ人の流動が足りず、優秀な人材は大企業の中に留まるか、自分で起業するケースが多い。そのため、トレンドに合わせて、大企業・中堅企業・中小企業も従業員に社外のサイドプロジェクト参加を許可してほしい。日本では一部の大企業は許可している傾向はあるもののまだまだ少ない。だが、自分のノウハウやスキルをシェアし合うことは、従業員にとって新たな収入だけでなく、新たな刺激を受けて本業にも良い効果を生み、企業と社員、双方にプラスがある」と指摘した。

 さらに、現在の会社に居ながら他者のプロジェクトに参加することは、転職を考える前のステップとしても良いという。

 「いきなりスタートアップに転職することはリスクもあり、自分に合っているかどうか分からない場合もある。サイドプロジェクトとして他社の業務に参加する中で、自分に合った働き方か、自分のスキルが足りているかどうかなども明確にわかる。採用する企業側も、大企業から給与の高い人材を雇う前に、一緒に仕事をしながら価値観や仕事の進め方が合うかどうか、互いに確認し合うことができる」

 さらにファリザ氏は中小企業におけるサイドプロジェクト参加について「中小企業は規模が小さいために自分たちの仕事だけで多忙である場合もあるが、休日など自由な時間に兼業したい場合でも、許可しない会社が多い。背景には『自社のスタッフを奪われるのが怖い』という思いがあるようだが、長期的に見ると本人のキャリアにとっても良いことではなく、自社でそうした人材をキープし続けることで本人のインプットの機会が減ってしまうため、長期的にみると会社にとっても良いことではない」との見解を示した。

■今、日本人に必要なのは「何もしない時間」?

 東京商工会議所の調査において、新入社員に聞いた「理想の上司はどんなことを重視する人か?」という質問には、「仕事の指導を丁寧に行う」「明確な理念や考えを持つ」「人間関係、チームワークを重視」などの項目が上位にあがったが、海外ではどんな上司が求められているのだろうか?

 ファリザ氏は「業界によって求められるリーダー像は違う。例えばAIなど技術分野では、その技術に詳しい人物が求められるが、プロジェクトマネジャーの立場であれば、メンバーが効率よく仕事ができるような環境作りをサポートできる人が求められる」と分析する。

 さらに、ALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社などが今年の新入社員4000人あまりに行った調査によると、「定時に帰りたい」という新入社員が過去最多になったことについては「当たり前で自然なことだ」と話す。

 「日本人が遅くまで残業する働き方は海外でも知られている。ヨーロッパのパートナーが驚いたのは、リモートで日本からできるような規模のプロジェクトだったにもかかわらず、日本人のメンバーが自分の家族を日本に置いて、1〜2年海外に移住してプロジェクトに参加したことだった。ヨーロッパの人々から見ると、リモートでも可能なプロジェクトに対して、自分の家族を置いて外国に住むというのは1週間でも辛く、あり得ない話だと言っていた」

 日本でも昔のような「長時間労働」を推奨するような時代からは変化しつつある。ファリザ氏は、良いアウトプットのためには「何もしない時間が大事だ」と話す。

 「私たちの時代はインプットの情報が非常に多く、身につけなければいけないスキルもどんどん変わってきている。インプットするのもいいが、ちゃんと情報を整理して、何もしない時間を作らなければクリエイティブなことができなくなってしまう」

(『ABEMAヒルズ』より)