※性被害のフラッシュバックのおそれがある方は閲覧せずにお戻りください。

 子どもに関わる仕事に就く人に対して性犯罪歴の有無を確認する制度「日本版DBS」を創設する法案が23日、衆議院の本会議で全会一致で可決され、参議院に送られた。参議院での審議を経て、政府・与党は今の国会での成立を目指す。 

【映像】小学6年生で性被害に…当時のりういちさん(写真あり)

 法案では、保育所や教育現場で犯罪歴の確認が義務付けられ、禁錮刑以上の場合は刑を終えた後、「20年」を照会期間とする。また、刑法犯罪にとどまらず、痴漢や盗撮など自治体の条例違反も対象とするほか、過去に性犯罪歴がなくても「性加害の恐れがある人」に対しては配置換えなどを義務付けるという。

 「日本版DBS」法案の導入によって、子どもの性被害は本当に減っていくのだろうか。
 
※本稿は2023年9月と2024年1月に番組が取材し、公開された一部記事を再編集したものです。

■ DBSでは効果がない? 「サポートがむしろ再犯防止に」

 過去『ABEMA Prime』に出演した、性障害専門医療センター代表理事で精神科医の福井裕輝氏は「限定的な制限では意味がない」と語っている。

「性加害者本人が『治療を受けたい』と言っても保険が適応されない。『自分は加害したくない』と近くの病院やクリニックに行くと『治療の対象ではない』と門前払いを食らう。問題を起こしたかどうかではなく、刑務所から出てきた人でもそうなる。我々の機関も自費でやっていて、カウンセリングが月に3万円、薬代が4000〜5000円程度かかる」

 その上で、福井氏は「世界的には1980年代に厳罰化が進んだ。DBSも海外ではけっこう当たり前で、古い政策だ」と言及。

「今はそれだけでは防げない。サポートがむしろ再犯防止になるだろうと、治療や職業の斡旋、窓口の設置、話を聞いて内面を支えている」

■ 小学6年生で性被害に…「被害を訴えるのはおかしい?」葛藤も

 性被害と聞くと「加害者は男性、被害者は女性」というイメージを抱きがちだが、男性も被害者になるケースがある。過去『ABEMA Prime』に出演した、りういちさん(49)は、小学6年生のときに性被害に遭った。その後、男子トイレがトラウマになり、今でも多目的トイレを使用している。
 
 ある日、近所に住む幼馴染の男子中学生の家に行ったりういちさん。「部屋に入って少し伸びをしていたら、いきなり後ろからズボンを下げられて、私の男性器をくわえられた。両脇を抱えられているのと、あまりに突然のことだったので動けなかった」と当時を振り返る。
 
 何が起きているのか理解できないまま行為は続き、さらには相手の男性器を口に押し込まれたという。その後、ようやく解放されたが「何をされたかなんて親に言えない。信じてもらえない」と、誰にも相談できない日々が続いた。

「高校生になったとき、一度だけ同級生に打ち明けたが『こいつホモられた』『やっぱり気持ちよかったんだろ?』とからかわれた。それ以上言えなくなってしまった。ショックを受けた」
 
 2022年に実施された若年層の性暴力被害の実態アンケート(オンライン・内閣府資料)によると、身体接触を伴う性暴力の被害を受けたことがあると答えた770人のうち、男性は95人(5.1%)。また「相談ができない」「相談しなかった」と答えた人の割合は52.4%(女性は46.2%)だった。

 精神保健福祉士の斉藤章佳氏は「性暴力は被害者が声を上げにくいことから、暗数が非常に多い」と話す。その上で「2019年に私が子どもへの性加害者117名から『どういうターゲットを選んだのか』というアンケートをとったら、3〜4割が『男の子を選んだ』と答えている。内閣府の調査と実態とには乖離があると思う」との見方を示した。
 
 被害者にはどのようなケアが求められているのか。りういちさんのようなケースについて、斉藤氏は「『心は拒否しているが、体が生理的に反応してしまう』とおっしゃる被害者が非常に多い」と話す。

「『被害として訴えているのはおかしいんじゃないか?』という葛藤を抱え、苦しんでいる。このあたりの理解が、特に男性被害者の場合はもっと広がるべきだと思う」
 
(『ABEMA Prime』より)