たくさんの種類が選べる季節、 新鮮な朗らかさを託して。

新緑が輝き、一年のうちでももっとも花の種類が多くなる5月は新しい環境にも慣れてきて、ほっと一息つけるとき。一方で、緊張が解けてちょっと無気力になってしまうことも。そんなゆらぎの時季に贈りたいのは、フレッシュで快活な花。元気づける意味合いも込めて渡したい。


ライラック
Syringa vulgaris

散ったあとも飾れて、長く楽しめる。
科名/モクセイ 原産地/東ヨーロッパ。枝の先に穂状に花をつけるライラックは、イギリスでは、春の訪れを祝う5月祭の花として知られる。古代ローマの祭りに由来し、夜明け前に森に入って花を摘み、それを教会などに捧げる風習もあったとか。「香りがとてもいいんです。そして、散ったときもかわいい。小さな花が色褪せずにポロポロッと落ちるんです。なので、私はよくそれを集めて小皿に飾ります。盛りだけではない楽しみがあるので、贈る際にはぜひそのことも伝えてください」


スズラン
Convallaria majalis

贈られた人が幸せになるという祈りとともに。
科名/キジカクシ 原産地/ヨーロッパ、北アメリカ、日本。現在、日本の市場に出回っているほとんどはドイツスズラン。ヨーロッパでは“聖母マリアの涙”ともいわれ、幸せを呼ぶ花として大切にされている。フランスではシャルル9世が1561年5月1日にスズランを贈られ、大変喜び、宮中の女性にもプレゼント。それが後に、この日にスズランを贈る習慣になった。「それでなくても守ってあげたくなるような可憐さがあり、10本くらい束ねると豪華なブーケになります。相手の幸福を願ってどうぞ」


バラ
Rosa

世界中の人を魅了するバラは、贈り花の代表格。
科名/バラ 原産地/ヨーロッパ、アジア。バラほど世界中で愛されている種類はないと思われるほどポピュラー。紀元前1500年頃から栽培されていたといわれ、長い歴史を持つ。「妖艶な大輪もあればスプレー咲きもあり、たくさんの品種があります。品種によって強弱はありますが、香りがよく、イラストのシャーロット・オースチンのようなティーローズ系は本当にお茶の香りがします。お茶好きの方にはティーローズにするなど、贈る相手のイメージに合った香りで選ぶのもいいと思います」


カーネーション
Dianthus caryophyllus

感謝の気持ちを表すのにふさわしい花姿。
科名/ナデシコ 原産地/ヨーロッパ、西アジア。カーネーションを贈る母の日はアメリカで生まれた記念日。20世紀初頭にある女性が母親の追悼のため白いカーネーションを配ったことがきっかけ。その習慣が明治末期に日本にも伝わり、5月の第2日曜日と制定された。「子どもの頃から贈る機会の多かった花だと思います。母でなくても、お世話になった方や親しい方に感謝の気持ちを込めて差し上げてみては。持ちもいいですし、何より美しいので母の日限定にするのはもったいないです」


ローズゼラニウム
Pelargonium capitatum

精油にもなる芳香を放つ、人気のハーブ。
科名/フウロソウ 原産地/アフリカ南部。葉からバラの香りがする、精油が抽出できるハーブ。食用のものは、花はサラダに、葉っぱはケーキなどの香りづけとしても使われる。「ハーブに花が咲くというのを実は知らない人も多い。ピンク色の楚々としたかわいらしい花をつけます。バラと合わせて、香りを調合するような感覚で贈るのも楽しいです。自然のアロマは気持ちをほぐす効果もあるので、ナーバスな環境にいる友人に差し上げると、リラックスしてもらえるのではないかと思います」

平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト

草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。

illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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